午前三時の音楽

ライブの感想などを書いています

サニーデイ・サービス TOUR 2023@3/11 大阪サンケイホールブリーゼ

サニーデイの音源を順を追って本格的に聴き始めたのは解散の後からで、当然ながらライブを見たのは再結成の後。
メンバー三人だけがステージに立ち、アイコンタクト以外のやり取りはほぼなし。
新譜を出してもなお「ふたつのハート」以外の新曲はほぼやらず、再結成前のベストな選曲を繰り広げる姿はたしかに目の前にいるはずなのに、ここではないうんと遠い場所で繰り広げられている16ミリフィフルムの懐かしい映画のリバイバル上映を観ているようだった。
さながら、「夏は行ってしまった」に切り取られた光景そのままで、かつての若者たちは皆大人になって、いまこうしてふたたびここに集まったのだというある種の残酷さと優しさを持ち寄りあいながらバンドの現在地を示しているように見えた。

最後にサニーデイ・サービスを見たのは2015年12月の新大阪メルパルクホールで、その時は当然知るよしもなかったけれど、オリジナルメンバー三人でのステージを観ることのできた最後のチャンスだった。
そこからしばらくの間、ただなんとなくとしか言えないままサニーデイや曽我部さんの音楽から離れてしまっていた(ついでと言ってはなんだけれど、コロナ禍に突入してから去年の冬までの間、ほとんどのライブに行くことを自粛していたらびっくりするほど音楽を聴く気力を失ってしまっていた)わたしが8年ぶりにライブに行きたいと思うきっかけになったのは、16年ぶりのエッセイ「いい匂いのする方へ」を読んだことから。
いまのこの人の、バンドの鳴らしている音楽を聴きたい。
すぐさまサブスクで直近のアルバムを聴いたところ、あまりに瑞々しくて力強い音に『生まれ変わった』サニーデイがいることにびっくりしてそのまますぐにアルバムをネットショップで注文し、ライブのチケットを抑えることに。


満を持して迎えた3月12日は、一週間前にはコートが必要だったことを思うとびっくりするほどの穏やかな春の陽気に包まれたサニーデイ・サービス日和。
本日は晴天なり、という言葉がこれだけ相応しい日にサニーデイのライブが見られることがただうれしい。
シンプルな幕が下がったステージに、定刻少しすぎにメンバーが登場。しょっぱなのオープニングナンバーは「海辺のレストラン」
わたしは初見だった大工原さんのプレーはとにかく音が大きい! ビートの力強さと突き抜け感が半端ない! そこにとめどない熱さで応える田中さんと曽我部さんのプレーの力強さ、柔らかく穏やかで、どこまでもまっすぐなきらめきを乗せて届けられる歌の力が半端ない。
サニーデイは本当に強力なエンジンを積んで新しい場所に向かっているんだなぁ。
このところようやくライブに行き始めたタイミングだったとはいえ、これだけ素晴らしい転機を迎えたバンドに絶好のタイミングでこうして再会できて本当によかったな、と期待は高まるばかり。
自身が最後に見たころの良い意味での緊迫感が程よく溶けて、曽我部さんがにこやかに優しく笑いかけるように音楽を鳴らしてくれているのが遠くからでもひしひしと感じられるのがなんだかとても嬉しい。
のんびりと取ったチケットは一階席後方の端っこと、決していい条件とは言えないながらもステージ全体が、そしてびっしり埋め尽くされた満員のお客さんが見渡せる位置で、みながそれぞれにバラバラな思いを持ち寄るようにしてここに集まり、このバンドが鳴らしてくれる音楽に身も心も委ねて楽しんでいることが伝わってきてなんだかとても嬉しい。
(最前列の端にいた、ものすごく力強く音楽に夢中になっている男の子の姿がなんだかすごく素敵でジーンとしてしまった。曽我部さんのエッセイにあった、ブルーハーツのライブに行った日の曽我部少年のエピソードが重なって見えるようで)
再結成前の往年のファンが楽しみにしていたであろう名曲たちから直近のアルバムの曲まで、すべてが、かつて感じたある種の残酷で優しいノスタルジーを掻き消すような現在進行形の瑞々しさで鳴らされるのだから見ていてたまらない。
一曲終わるごとに優しい笑顔と口ぶりで曽我部さんが告げてくれる「ありがとう」と、何度も繰り返されたメンバー紹介にも、いまこの三人でバンドをやる喜びが溢れているよう。

以前はほとんどなかったMCは、メンバー間のやり取りもたっぷり。
(以下、覚書のため、正確なニュアンスなどは各自脳内補完してください。順番はバラバラです)


曽我部さん「メンバー紹介します。ベース、田中貴! ドラムス、大工原幹雄! そしてそして!」
田中さん「ボーカル・ギター、曽我部恵一!」
曽我部さん「そしてそしてって言ったら『ボーカル・ギター、曽我部恵一』って言ってねって楽屋で何度も言ってたんだよね」

うん、微笑ましい。笑


(出身地の紹介が入り)
曽我部さん「ベース田中貴! 愛媛県松江市出身ーーじゃなかった間違えた、今治市! いいところだよね、愛媛」

わたしも好きな街です、またライブで行けるといいのにな。

曽我部さん「オンドラムス、大工原幹雄! 神奈川県横須賀市出身!」

四国出身のお二人に比べると都会っ子だよね。横須賀はスカジャンの発祥の地。(ヤンキーの街?)スラムダンクの舞台だよね? それは鎌倉じゃない? などなどツッコミが入るのも和やかですね。

曽我部さん「そしてそして!」
田中さん「ボーカルギター、曽我部恵一!」
曽我部さん香川県坂出市出身! 僕、坂出の観光大使になったんですよ。って言っても特にまだ何もしてないんですけど」

就任は2022年で、今度香川のイベントに出られるんですよね。

曽我部さん「すごく大きな紙袋をもらって……お菓子の下にお金が隠してあったりするあれかなって思ったら全部名刺だったんだよね。笑」

期待されてるなぁ!笑

曽我部さん「すごく長い商店街があったんだけど、アーケードも老朽化して、お店もほとんどシャッターが降りちゃってて」

地方都市の現実ですよね、うむ。


(「NOW」の後に)
曽我部さん「この曲は30年くらい前にイギリスに行った時、向こうには新幹線なんかがないからずっと鈍行列車で田舎を走っていて、窓の向こうにピンクフロイドのジャケットみたいな光景が広がっていてできた曲です」

この日にセレクトされた再結成前の楽曲たちのテンションがどれも、ひりついた青春を懐かしむような空気ではなく、ごくごく自然な温度感で直近の作品ともシームレスに鳴らされていたのがほんとうによかった。
NOWがまさか聴けるとは、という驚きもあったなぁ。


(「幻の光」の後)
曽我部さん「煙(舞台演出のスモーク)がすごいことになってるけどこれは大丈夫なの? 幻の光に合わせて? この曲のPVは30年前の田中さんのあの名曲『星空のドライブ』の時から撮ってくれてる監督にお世話になって」

田中さん、いじられてちょっと困惑してました。笑

曽我部さん「真冬のすごく寒い海で夜更けから明け方までかかって撮影をして、僕たちよりも長時間撮影スタッフと主演の女の子は寒い中で頑張ってくれて。すごく可愛い、素敵な女の子が出てくれて」

この素敵な女の子って言い方がすごく曽我部さんだ〜って感じできゅんとしました。

www.youtube.com


ドキュメンタリー映画について)
曽我部さん「最初は(大工原さんが正式に加入した2020年春からの)ツアーに密着したライブ映画を撮る予定だったんだけど、コロナでツアーが全部飛んじゃってどうしようってなって。自分が出てるから恥ずかしい気持ちがあったけど、観てみたら案外ふつうに観られて。2時間半もあってすごく長いからあんまり一日何度も流れないと思うんだけど、京都は大好きなみなみ会館、大阪ではシネマート心斎橋で上映が決まっているので見てもらえると嬉しいです。
監督は普通にライブを見に遊びに来てくれたはずなんだけど……なぜかきょうもカメラ回してる。笑」

どこかで観られる日が来るのかな? 楽しみだね。
楽しみな次の話題は映画以外にも。


曽我部さん「今日発表になったんですが、神戸と鳥取で追加公演があります。神戸は大好きなライブハウスVARIT、米子はAZTiC laughs、ここは……知らないけど(笑)新しく出来たのかな? びっしり満員でやります」


ツアーの延期にイベントの中止、あらゆる規制、とさまざまなことを乗り越えた先でこうしてびっしり埋まったホールでライブを行えることにはさぞかし感慨深いものがあるんだろうなぁ。
スロウライダーの前には「次の曲は歌ってほしいんだけどーーもういいんだっけ? 控えめに歌って」との呼びかけもあったり。


(エッセイ集について)
曽我部さん「16年ぶりのエッセイ集、『いい匂いのする方へ』が出ました。みなさん読んでくれましたか? 今日の物販ではサイン入りで売ってます」
(拍手が起こる)
曽我部さん「田中なんてその間にもう5冊くらいラーメンの本が出てるのに。笑」

ラーメン評論家としてバラエティに出てたもんなぁ。笑

曽我部さん「ラーメン狂想曲のタイトル、僕が書いたんですよ。青春狂想曲と同じような字体でってリクエストされて。きょうは売ってないんだよね」
田中さん「大阪では前にも売ったからいいかなあって」

遠慮しやんでいいのに。笑

曽我部さん「時間もかかるし再録でいいよねって言ってたら編集さんにうまいこと言われて書き下ろしになっちゃって。みなさん知ってると思うけど僕、お店を始めたでしょ?(カレーの店8月)そのことや家族のことを書いてほしいって言われて。昔から作家がお茶の水山の上ホテルに篭って執筆する、みたいなのをやりたくて缶詰ってできますかって聞かれたら缶詰ってなんですか? って言われちゃって。笑
ホテルは無理ですって言われて会議室で朝から晩まで書きました。お昼には下の小窓がガチャって開いて食事が差し入れられてーーってそれは冗談ですよ。(笑)美味しいご飯が出て」

物販ではダイクさんの20年ほど前のバンドの音源も並んでいたのだとか。
高校時代! サニーデイも大学時代にデビューしていたとはいえ、早熟だなぁ。


季節が巡ってきたからなのか、中盤に差し掛かる頃には名古屋では演奏されなかったという桜super loveが披露。この曲の中で歌われる「君」は晴茂くんのことなんだよな、と思うと、こんなにやわらかくてきらきらした多幸感に包まれているのにどこか切ない。
この寂しさや悲しみをあたたかく包み込んでくれるところがサニーデイの世界なんだよなぁ。


曽我部さん「桜super loveを歌ったら晴茂くんのことを思い出したから晴茂くんの話をしたいんだけど――cinra の企画で亡くなった人の思い出を語るインタビューの企画があって、晴茂くんの話をしたのが昨日アップされました。見てくれましたか?」
(拍手が起こる)
曽我部さん「編集の若い女の子から企画の話を受けて――彼女も大切な人を亡くして、それを乗り越えて生きていて、そういったことの話をしてほしいという企画でした。インタビューをしてくれたのはずっとお世話になっている北沢夏音さんで、すごく素敵な映像に仕上げをてくれました」

ふたたび三人のバンドになったこと、それでも晴茂くんへの思いがいまもずっとあって、晴茂くんとともに生きているのだということ。
すごく優しいまっすぐな気持ちが語られていて、ライブの前日に見られたのはとても幸福なことだなぁと思えてとても良かった。

www.cinra.net


(最新作「DOKI DOKI」について)
曽我部さん「前作の『いいね』はダイクくんが入る前から作っていたから友達のオータコウジくんや僕がドラムを叩いてる曲もあるんだけと、今回はダイクくんと三人で作った作品です。
ダイクくんが加入してからの新しいアーティスト写真を撮ろうって話になって、30年くらい通ってる練習スタジオにバック紙を引いて撮影しました。三人ともすごく自然ないい笑顔のいい写真になったから、初めはイラストにする予定だったのを変更して、これをジャケットにしようってなって。タイトルはこれしかないだろう、と『DOKI DOKI』になりました。長く手元に置いてもらえる作品になってもらえればと思います」

30年ずっとお世話になっている人たちの話が繰り返し出てきたのもきっと大きな意味があるんだろうな、というのを個人的には感じたり。
ずっと関わり続けてきてくれた人たちとともにバンドは30年間の地続きの物語を生きていて、そうして過去と現在を行き来しながら、あらたな輝く未来を目指している、というまぶしいほどに穏やかでやわらかな現在地がステージの上で輝いていて、そのひとつひとつをこうして音楽だけではなく、言葉でも紐解いてくれていたのかもなぁ。

ややメロウな選曲とたっぷりめのお喋りで楽しませてくれたあとは「ここからは後半戦」と、グッと深くギアチェンジが入り、ヒートアップしていく選曲が続く後半戦へ。
外せないだろうに、と期待していた「風船賛歌」や「春の風」は満を持してここで。
一気に視界が広がって熱量が高まるステージにホール中がみんな目が離せなくなる。
あまりの心地よさにぼんやり身を委ねていたら一気にすごい場所まで連れていかれたぞ。
ステージの上の曽我部さんと田中さんが互いに向き合って楽器をかき鳴らす姿、その真ん中で力強くビートを刻む大工原さん、の構図があまりに美しくて息をのむほど。
「心に雲を持つ少年」で歌われた「ずっと消えない太陽」がまさしくステージの上に輝いていて、目が離せない。
ものすごく純度の高いきらめきに魂ごとに灼かれるような衝撃が溢れていて、サニーデイは3ピースロックバンドとしてここまで登り詰めた凄まじいステージを見せてくれるようになったんだな、と圧倒されるばかり。
あんまり派手に動いたら迷惑かもしれへんし、と遠慮していたのですが、後ろが壁やったから気にせえへんで手を上げても良かってんやん、と気がついたのは「こわれそう」に夢中になってリズムをとっていた終盤になってから。遅いよ!笑
楽曲ごとにさまざまな景色を見せてくれる中で、力強く芯の通ったバンドサウンドとやわらかく真っ直ぐにこちらへと届く歌の力はどんな音を鳴らしてもこちらをとらえて離さない。
煌めきに満ちた音の洪水が続いていった中、会場の空気の色をガラッと変えたのは「雨が降りそう」
いまここで繰り広げられているのは音源の再現のためではなく、3人でどこまでも昇りつめていく瞬間の芸術なんだよね、きっと。
ひりつくような痛みを伴う景色が繰り広げられながらも、そこにあるのはかつて感じたノスタルジーではなく、「いま」を懸命に燃やし尽くす美しすぎるロックバンドの奇跡のようで。
アルバム全体の雰囲気はソカバンの再来っぽさを感じさせるんだけれど、この世界は30年の時間を生きてきて、今なお新しい物語を語り続けるサニーデイ・サービスの現在地なんだなぁと改めて思い知らされるわけです。
いやはや一体……わたしは何を見せられているんだろう?(※一回目)と夢中になりながら圧倒させられるままに本編は終了、ただちにアンコールへ。
熱狂の渦の中、拍手は鳴り止まず、本編最後に選ばれたのは「セツナ」

えっと……いや、楽曲自体が素晴らしいのはもちろんなんですが、あのものすごい高まりを見せてくれたすべてを燃やし尽くすようなパフォーマンスがあまりに衝撃だったんですが!?
目の前で繰り広げられているはずなのに何が起こっているのか訳が分からなくて混乱するほどすごい。あまりの熱気に、席についていた皆も一気に総立ちに。


youtu.be

改めて音源を聴いてみたらいい意味で見えてくる景色がぜんぜん違う! ほんとうにわたしは一体、何を見せられてしまったの?(※二回目)と呆然としてしまうほど。
みんなの中に「とにかくすごいものを見せられてしまった」という思いがあったのか、本編終了のアナウンスが流れた後にも方々から熱量のこもった拍手の音が鳴り響いていたのがとても印象的でした。

いやはや、あまりに凄すぎて一体何を見せられてしまったのか本当によくわからない。(※三回目)
3ピースロックバンドという削ぎ落とされた形態でここまで凄まじい表現にたどり着けてしまうんだな、いまこの時、このタイミングでこの場に来られて本当によかったなと思えた奇跡のような一夜でした。
また行けるといいな。今度はもう8年空けない。笑


BLUEST FACTORYの曽我部さんのイラストのデニムトートを持ったわたし

BLUEST FACTORYのトートバッグがかわいいので記念写真撮りました。お靴はNAOT、靴下はキワンダ。
パーカーもかわいかったけどパーカーって普段着でしか着ないから見送りしちゃった。


「街へ出ようよ」はサニーデイの永遠のテーマだと思うんだけど、なんだかこのポスターのビジュアルとともにジーンとしちゃうね。


※ 呆然としすぎていったん前の席に移って人が捌けるのを待ちながら帰り支度してたら隣のお兄さんが上着忘れてますよって教えてくれました。笑 優しい。

※ 記念に看板の写真撮ってたら前にいたお兄さんたちが「邪魔になるから」ってささっと退いてくれました。サニーデイのファンの人、みんな優しいね。

※すれ違う人たちはお子さん連れから比較的お若い感じの方まで多数。みんな嬉しそうで興奮気味でなんだかこちらも嬉しい。
とにかく余韻が凄すぎてなんだったのかよくわからない(※四回目)……すごかった……と心の中で言いながら(ひとりだもの)春の夜風にあたりながら大阪駅まで歩いてご飯を食べて帰りました。

※でもって具体的な曲やライブ全体の流れがとんでもなくフワフワしているのは心地良すぎて没頭してずっとフワフワしていたあまり、びっくりするほどセトリを覚えていないからです。笑
ツアー中だからか、具体的に言ってくれてる人があんまりいなくて記憶の補完ができない。笑
ライラック・タイム」最高でしたね。

とにかく素晴らしい時間だった、ということが少しでも伝われば幸いです。まだ続いていくツアーに参加される皆さんがどんどん素晴らしい景色を見られますように。
ひとまずは映画が楽しみですね。

高橋徹也×小林建樹 2023/1/27@吉祥寺Star Pine's Cafe

なんと一カ月ぶり! の小林建樹さんのライブは建樹さんのお誕生日の翌日に開催。
高橋徹也さんと小林建樹さんはおふたりとも一月生まれの同級生同士のシンガーソングライターで、同学年の51歳。
稀代のベーシスト鹿島達也さんのサポートによりご縁があったとは言え、付かず離れずの距離感のまま、長年お互いを意識し合っていたのだというおふたりの共演が6年半の時を得て再び!
先月3年ぶりに東京に行ったばかり、かつ感染症の拡大もすごい状況下なのですから本来ならおうちで楽しんだほうがいいに決まっているのですが、こんなにもこんなにも大好きなお二人の夢の対バンを見逃すなんてそんなことできるわけありません。大阪に帰った翌日に格安パックツアーを手配し(笑)、いそいそ東京へ。東京都美術館エゴン・シーレ展(芸術への向き合い方や鋭敏な感性の凄まじさなど、高橋さんともどこかしら通じるものを感じたのでおすすめです)を見て、お買い物やお茶を楽しんでからいざライブへ!
会場は高橋さんのライブではお馴染みのホームのひとつ、憧れの吉祥寺Star pine's Cafeです

グランドピアノがある会場ってほんとうにいいな。そしてスタパはステージセットと照明の演出の美しさがたまらなく美しい。映像で何度も見たあのステージだ! と感激しながら開演を待っていたところ、先行の小林建樹さんが登場!
アコギを爪弾きながら力強く高らかに始まるオープニングは「M&R&R」!
毎回一曲目にセレクトされる楽曲には驚かされますが、今回も思いもよらないものだったなぁ。歌声とギターの音色が会場いっぱいに響き渡った瞬間、全身が音に包み込まれる心地よさと感動で胸が震える!
建樹さんはギター弾き語りの熱量もまた素晴らしいんです。ギターの音色と歌声を一体化させて、まるで全身を楽器のように力強く響かせてしまう!
ライブならではの力強くのびやかなフェイクをふんだんに取り入れ(カッコいい―!)ながら、立て続けに流れるような勢いで「LOVE」、ラブ繋がりでと選ばれたのだという「進化」と、誰も予想など付くはずもなかった選曲で流れるように三曲。あまりの圧巻のパフォーマンスに、見ている側もひたすら息をのんで見守るほかないのです。
(「LOVE」の歌詞にあるように『いままでとこれからが重なり繋がるこの場所』から未来に向けた音楽を鳴らそう! という思いはおふたりともに感じられましたよね。なんとぴったりなオープニングだったんだろう)

ここでひといき付くように最初のMC。

「会場にご来場の方、配信でご覧の方、そして高橋さんのファンの皆様こんばんは」

配信組にも挨拶してくださるの、うれしいね。優しさを感じる。

「Star pine's Cafeにはよく呼んでもらって、19年前にワンマンをやった時の音源はきょう持ってきたアルバム(流れ星トラックス)にも入っています。懐かしいですね」

時の流れってすごいなぁ。建樹さんはもう10年(!)バンドでライブを行っていないのですが、千ヶ崎学さんと宮川剛さんとの3ピースバンドの演奏も素晴らしい音楽の魔法にあふれているんです。音源を残してくださっていてありがたいなぁ。
序盤三曲のこの流れは初見の高橋さんのお客さんを取り込もうという意識と気迫を感じました。
わたしはおふたりとも大好きですが、建樹さんの活動にメジャー時代の代表曲でしか触れていなければ、ハイトーンのキュートな声とカラフルな音色が特徴の捻くれたポップスを歌うシンガーだと思っている方も多いと思うんですよ。
いや、それも建樹さんの魅力の一つではあるのですが、建樹さんの歌とサウンドにはソリッドなロックのダイナミズムもひしひしとあふれていて、特にギター弾き語りになるとその要素がぐぐっと強まるんです。
これは高橋徹也という強力な力を持つ同学年シンガーソングライターへの挑戦状であるのと同時に、いまの建樹さんを知らない人への『2023年の小林建樹』の自己紹介の意味合いの強さを感じます。
前回(6年半前)のライブでは『良い意味でいつも通りの小林建樹』を見せてくださることで我らを圧倒させてくれましたが、今回は前回とも直近のソロワンマンともまるで違う! まなざしから受ける気迫がとにかくすさまじくて、(e+が繋がらなくて20番台だった)後方のわたしにも届く目力から溢れる色気が凄い!
12月のワンマンで感じた喜びに満ちたキラキラしたまなざしとはまったく別物なんですよ。そしてもちろん、放たれる魅力と引力が凄まじい。強力なライバルとその音楽に魅せられている聴衆を意識するとこうも変化するものなんですね。
緊張感の溶けないチューニングタイムを挟んでからは、キラーチューンのヘキサムーン!
この曲はピアノでもギターでも本当に映えるよね。曲の展開はどことなくだけれどMy favorite girlあたりのポップセンスにも重なって聞こえるような。同時代に生み出された曲ですもんね。ただロマンチックなのとは違う、独自の視点が本当にユニークだし、いつ聞いてもタイムレスな歓びと心地よい開放感に満ちていて文句なしに心地良い。
続いてはこれまた以外な選曲だった「告白」! カッコいい~!!
不透明な政治や社会への不信感など、『いまこの時』ともリンクしているように感じられる社会性を帯びた歌の世界やスリリングな曲の展開など、どこか高橋さんの「大統領夫人と棺」を思わせるよう。
のちのMCでも和音やコードの進行に共通点を感じる、と発言されていましたが、一貫して高橋さんのことを強く意識したセレクトですよね。
「幹線道路を走っている~♪」のくだりがわたしは大好きなのですが、このパートをアカペラで高らかに歌ってくれたくだり、最高にカッコよかった。

続いてMC

「僕は自分で作ってうたうシンガーソングライターなんですが、たまに人に歌ってもらうこともあって。きょうはすごく寒い日で、予想していたよりもずっと寒くて…...寒い感じの曲を」

ここで披露されたのは2006年の冬季のトリノオリンピックのテーマソングだった平原綾香さんの歌った「誓い」
これもまた珍しい、誰も予想できるはずもなかったセレクトだ!(アルバム「ゴールデン☆ベスト」に建樹さんverが収録されています。廃盤ですが中古などで比較的に手ごろに入手できますのでおすすめ)
心を震わせる力強さと美しさ、溢れるような思いがまっすぐ胸に届く、「いつも」とはどこか趣が異なっているからこその素晴らしさを堪能させてくれる名曲ですね。ロックシンガーとしてのダイナミズムを感じさせてくれる圧倒的な歌の力、ほんとうに素晴らしい。
オリンピックという各々が闘志を燃やす舞台を照らし出すために生み出された曲ですが、「きょうこの日」という舞台に挑むにあたっての決意表明も込められていたのかな?
(この後の「ありがとうございます」の言い方、かわいかったですね。建樹さんのチャーミングな一面が感じられました)

さて、びっくりするほどの充実感で我らを魅了してくれたあとは、間髪を入れずにピアノに移動されての後半戦がスタート。
高橋さんを意識されてか、ジャズ風のイントロで始まり(この曲は既存の何かの曲?? ご存じの方がいらしたら任せた!)
一曲目に選ばれたのはこれまたまさかの「イノセント」! 個人的には今回のハイライトのように感じて、胸がぎゅうっと苦しくて泣きそうになってしまった。
イントロの静かにこぼれおちるようなピアノの音色から歌いだしのあまりの美しさと、前半から一転した空気の描き方! 
この人のおそるべし表現力の深さ、美しさをここまで見せつけてくれるんですね。
歌声にも歌詞の世界にも建樹さんのイノセントなピュアネスがあふれていて、あまりの美しさに心が震えて目が離せない。高橋さんの伸びやかな高音の美しさに魅了されている方にもこの魅力はきっと届いたよね。
原曲ももちろん素晴らしいのですが、ピアノ弾き語りのそぎ落とされたサウンドと、いまの建樹さんのより成熟した表現で鳴らされることで楽曲の世界観の奥深さが何十倍にも増幅されているように聞こえるんです。
この、サビ前に少し転調してドラマチックな高鳴りを演出する構成は高橋さんの楽曲でもよく見受けられるもののような。やはりライバルを強く意識してのセレクトだぞこれは(※2回目)。
そして流麗なアウトロから流れるように奏でられたのは「最初のメロディ」!!! 前回のワンマンで『オールタイム歌える曲ではないけれど、今回は』と思いを込めて歌われた「replay」の延長上に鳴らされているかのように個人的には感じました。
(実際この二曲はメジャーを去られた際のベスト「Blue note」の新録として、新しい場所への出発の決意を感じさせるように最初と最後に配置されていますね)
前半のLOVEをテーマに届けられた3曲を受けるように、音楽に、芸術に、そしてそれを夢中で受け止める我ら聴衆への愛と喜びが、きらめきが音の中にこんなにも満ちている。
去年のライブでもひしひしと感じたことですが、いまここで鳴らされている音楽はどれも、『いま現在』の感情を込めてあらたな命を宿されてのreplayなんですよね。だからこんなにも瑞々しくて新鮮で美しいんだ。
サビ前、「生まれたんだ♪」のくだりで鍵盤から離した掌が軽やかにふっと舞う仕草、ぎゅっと胸をつかまれるように愛おしいな。音色に導かれるまま、高揚感に震わせる姿があまりにも美しいんです。本当に、「絵になる大人」なんだから。
美しい声のバラードにみながうっとりとしたところで続いて「spider」! えっこの構成はあまりに完璧だな! 天才だな! 知ってる!!!笑
この軽快に跳ね回るようなジャズテイストのピアノの調べとゾクゾクするような昇りつめていく歌の世界、やはり高橋さんをものすごく意識している!(※3回目)
アウトロに入る前、なんと「空想故郷」をワンフレーズ入れて〆るのにもびっくりさせられました。
ノンストップで繰り広げられた演奏を一旦和らげるようにここで「spiderでした、ありがとうございます」のご挨拶と共にピアノを響かせ、会場からは感激を伝える拍手がさあっと響きます。

「すいませんね、緊張しいでごめんなさい」

はにかんだ優しい笑顔と共に告げられる言葉、らしいなぁ。
いいんですよそんなの、我らはこの素晴らしいパフォーマンスに魅了されて固唾をのんで見守らせていただいているだけなんですから。
とは言え、『ファンが知っているいつもの建樹さん』とは異なる緊張感があったのは確かなんです。(昨年のワンマンではもっと軽やかな空気で笑顔が自然にあふれ、合間のおしゃべりにもファニーなやわらかさがありました)
以前のライブではよく「緊張するわぁ」とはにかみながらおっしゃっていて(そんな風に全く見えないのに!笑)、人前でライブをやるのは苦手とおっしゃっていたほどの方ですからね。そんな方があえての緊張感を隠さない、聞き手を圧倒させるパフォーマンスを見せて下さっていることにすごく大きな意味があるんだよなきっと。

「年明け二日にアルバムをリリースしました。星座占いが好きで個人的に勉強していて、そうするうちにすべての星座のことがすごく好きになったので曲をつけたくなりました」

(詳しい解説はWEBラジオ、「ムーンシャインキャッチチャーR」でどうぞ!)

youtu.be


なんとここで、「何座ですか?」の全曲メドレー!
ゲーム音楽のような彩りの鮮やかさ、実験的な試みがあふれたカラフルな楽曲たちがピアノで奏でられることで、ドラマチックな美しさを際立たせてくれます。
この人の興味関心はどれほどのもので、どれだけの音楽の引き出しを持っているんだろう? 我らにこうして見せて下さっているのはそのごくほんの僅かでしかないんだな、と改めて驚かされます。
圧巻のメドレーの後は、すこし長めのMC。

「去年くらい今年にかけて、音楽をやっていく上での姿勢――気持ちの持ちようを、明るい感じでやっていこうと決めていたんです。もともとそんなに陽気ではないけれど明るくもない……普通くらいなんだけれど、頑張って明るくしようと思って。そのくらい明るくやっていかないと、世の中がそのくらい暗いムードの中にいるから普通に暗くやっちゃうと埋もれてしまう感じがして」

こうして丁寧に、心を手繰り寄せるように優しく語りかけてくださるところに建樹さんらしさがあふれているなぁ。
建樹さんはすごく繊細でちょっぴりシャイな方なのか、ご自分の気持ちを語られるときにはいつも照れ隠しのように関西弁での冗談交じりでやわらかくお話してくださるところがすごく好きです。
誠実さと優しさ、真摯なお人柄があふれていらっしゃる。
ここで思い出さずにいられないのは、前回のワンマンライブ「UNERI」でのMC。

「歌詞の内容が暗い……後ろ向きなんですが、いまの時代の空気が反映されていて。今年は本当に洒落にならないヘビーな出来事がたくさん起きて、いまこの時も平時とは言えない状態が続いていて、心の中を覗くと大きなうねりの中に飲み込まれているように感じます。ライブのタイトルも渦潮とか鳴門海峡が一番ふさわしい気がするけれど、鳴門海峡はさすがにどうかと思ってUNERIにしました」
「ほんとうにこんな苦しい状況だけれど、きっと10年経つ頃には『あの頃は大変だったね』と言い合えると思う、そんな未来に向けて歌っていけたらと思います」

(詳しいレポートはこちらでどうぞ)

love-lylic.hatenablog.com
世の中のこの状況にこらえようのない苦しさを感じて押しつぶされそうな気持ちでいたこと、そんな中で、だからこそ音楽を届けることで希望を描きたい、『人生の土台』を未来へと託して生きていきたいと決意表明を示してくれた昨年のライブを経て、建樹さんが新たな目標を掲げていらっしゃることを聞かせていただけたようでなんだかすごく嬉しいし、こちらまで励まされるよう。
最初のメロディで歌われているように、音楽の中にこそこの息苦しい暗闇に覆われた世界を照らす光があることを信じていて、それらをわたしたちにこんなにも真っ直ぐに手渡してくれる。だからこんなにも心を惹きつけてくれるし、信じたいと思わせてくれるんだね。

思い切り余談ですが、わたしはコロナ禍になってから10年以上通っていた行きつけの美容院を変えたり、ずっと憧れのままだったお洋服屋さんの服を着るようになってファッションが頓智気になったのですが(初めてお会いするツイッターのフォロワーさんが名乗る前から「らいさんですか」って気づいてくれる。こんな人いないもんね。笑)(たまにツイッターに私物載せるからな……みんな見せられても困ると思うんですけどw 好きなものが載ってるとわたしが楽しいんです)、あまりにも社会全体が閉塞感と不安でものすごく息苦しいので、『世間の目や自分の年齢のことを気にして自分を抑えるなんてもういいや! 限りある人生なんだから好きな服を着て楽しく生きよう!』と吹っ切れたからなんですね。
それもまた、世の中がこんなにも暗いのなら自分自身を明るく奮い立たせて生きよう、ということなのかな。

 


これは建樹さんファンであることのひそやかなアピールのピアノモチーフのお帽子。お帽子作家のここあみさんの作品です。

<余談終わり>

ここで満を持して、建樹さんパートの最後に演奏されたのは「祈り」
一向に終わらない争い、傷つき、戸惑う事は避けられなくとも、生き続けること、音楽を、希望を奏で続けるのだという高らかで優しい意志表明が瑞々しくあふれ出していくよう。
自分の心の内をまっすぐに見つめる誠実さと強さ、痛みや弱さから目をそらさずに向き合い、芸術の中にそのすべてを落とし込んで昇華してくれるところ、本当にすばらしいね。
出力されるもののスタイルは違えど、驚くほどの高次元の美しさの中で痛みや悲しみを包み込んでくれる様には高橋さんとも通じるものを感じます。

1/27 高橋徹也×小林建樹ツーマンライブ 小林建樹セットリスト
1 M&R&R(Album_Mystery)
2 Love(Album_Mystery)
3 進化(Album_Rare)
4 ヘキサムーン(Album_Music Man)
5 告白(Album_Shadow)
6 誓い(平原綾香さんカバー)
7 イノセント(Album_Music Man)
8 最初のメロディー(Album_Blue Notes)
9 Spider(Album_Emotion)
10 祈り(Album_Rare)

圧倒的な美しさで我らを虜にしてくれたところで、前半パートは終了。「ありがとうございました、次は高橋徹也さんです」との呼びかけとともに、しばしの休憩タイムへ。

いやあ、まったく予想なんてつくはずもないすごいパフォーマンスで2023年のさらなる進化系の建樹さんだった。
タカテツファンの皆さん! これが! これこそが2023年の最新の小林建樹です!!!(なんであなたが偉そうなの。笑)(だってめちゃくちゃ誇らしくて嬉しかったんだもん)
おお、早速物販で建樹さんのCDを買った人がたくさんいるみたいだ! そうだよね、こんなライブ見せられたらね!
めちゃくちゃ喋りたいのに電波が入らないw し、今回はお知り合いに会えずにボッチだったので強制的にお口チャックのまま、しばしの休憩タイム。
さあて、ここからは後攻高橋徹也さんの登場です!

 

さて、ここからが後半戦! 舞台の幕が降りるような静かな美しさの中、エレキギターを手に高橋さんが登場。
ややゆったりした白いシャツにジーンズの装いは大学生のようなさわやかさ。この人は本当に永遠の文学青年ですね。流行に左右されないオーソドックスで良質なものを選び抜いたファッションスタイルは音楽の姿勢にも反映されているよう。
SEの流れを汲んだように静かに始まるのは「Black bird」!
屈指の名曲はいつ何度聞いてもすばらしい。ここから高橋徹也の奏でる音楽の世界という静かな夜の海への船出が始まるんだ、と期待を膨らませてくれるようだ。
創作の源にヘミングウェイを初めとする海外の文豪の存在は大きく影響しているのでしょうが、高橋徹也という芸術家の非凡な才能、誰にも似ていないこの崇高な美しさを称えた歌声と旋律は「誰一人到達したことのない美しい場所」へとわたしたちを誘ってしまう。孤高の天才、ここに極まれりですよね。音楽という芸術でこんなことを成し得てしまう人がいるだなんて、という衝撃はいつまで経っても醒めることなんてないのです。
続いて、流れるような流麗な美しさで歌われる「八月の流線形」の軽やかな開放感と安らぎ。夜に生きるもの~ベッドタウンや大統領夫人あたりのとてつもない閉塞感を思うと、この変化にはびっくりさせられますが、この風通しの良いやわらかな心地よさは「いま」の高橋徹也の魅力なんですよね。
もしや対バン相手である建樹さんの楽曲の心地よい軽やかさを意識してこの流れで来たのかな?? 建樹さんがロックモードを打ち出してスタートしたのとは対照的ですね。
ここで一息ついて、ご挨拶のMC。

「どうもこんばんは、高橋徹也です。きょうは絶対寒いとか言いませんよ」

あまのじゃくだな!笑

「自分はなぜ9割くらいワンマンかと言うと……単純に言うとあんまり親しいミュージシャンがそれほどいないんです。きっと小林さんもそうだろうな、俺以上だよなって。それで『そうだ、あの同級生のよくわかんないかっこいい人がいたな』って思ったので久々に連絡をしました」

同時代のシンガーソングライターであり、共に鹿島達也さんがサポートに入っていたご縁があったことでおふたりには昔から接点があったそうですが、初共演は約10年前。
初めてのツーマンが決定した7年前にはそれはもう驚いたものですが、高橋さんってここまで建樹さんを意識してくれてたんだ? と、ご本人の口から聞かせていただけると両者を大好きなわたしはそれもう嬉しいびっくり。
(余談ですが、曽我部さんとも繋がりがあって「曽我部くん、高橋くん」の関係性だったのにはすごく驚きました。また共演してほしい……曽我部さんとさわおさんはわたしの二大スターです)
のちのご本人を前にしてのラブコールもそうですが、互いに角度や深度は違えど、『好敵手と書いて友と読む』というライバル意識のようなものをお持ちだったのかな。
それにしたってこれだけかっこいい人に「よくわかんないかっこいい同級生」と言わせる建樹さんの実力!(なんでわたしが得意げになるの。笑)
しかしこのトークの流れ、タカテツと初めて出会う建樹さんのファンのみなさんにも非凡な存在感を見せつけてくれますね。
やがて話題は「レコードのB面にこそ名曲が多いなと昔から惹かれていた、自分のデビュー曲もカップリング曲にこだわりを込めて作った」と「サマーパレードの思い出」へ。

「きょう初めて見る人もいると思うので……シングルやれよって話なんですけど」

ほんまやな。笑
建樹さんファンのみなさん、高橋さんってこういう人なんです。建樹さんとはちがう角度に鋭角でおもしろくてかっこいいでしょう?笑
My favourite girlの頃の売り出し方を見てると、当時の高橋さんっておそらくは(長身でハンサムだし、すごくおしゃれだし)オリーブ少女を卒業した大人の女性たちのあこがれのボーイフレンドで遅れてきた渋谷系っぽい売り出した方だったのかな?? ジャケットもそんな雰囲気ですもんね、などと思ったり。ロマンチックできらきらしたこの曲をいまの高橋さんの成熟した魅力と大人の色気で表現してくださるの、たまらないね。
続いて「Blue song」へと流れていくんですが、おそらく意識的だったキャッチーでポップな部分がすこし影を潜めても、根底の美しさと物語性が地続きに聞こえてくるよう。高橋さんはどこまでも美しい人だな。
楽曲の根底には共通性を感じられますが、歌詞の世界の憂いを帯びた儚く優しい美しさは異なる部分かな。
自分の感情の中でも、不都合としかいいようのない悲しみや痛みや戸惑いから決して目を逸らさない、それらすべてをあたたかく穏やかなまなざしで見つめながら美しい音楽の中に閉じこめてしまうところ。
出力されるものは異なっていても、わたしが建樹さんの音楽と高橋さんの音楽に感じる「美しさ」の源泉には重なり合う部分があるのかもしれない。

「自分の友達や周りには猫好きが多いんですが、子どもの頃は犬を飼っている人のほうが周りにも多かった気がします。いまは世の中では猫のほうが人気のようだけれど僕は完全に犬派で、秋田犬や柴犬が特に好きです。そんな自分なんだけれど、30年以上作詞作曲をやっている中で、周囲の人の影響もあって初めて猫が歌詞に出てくる曲を作りました」

ここで披露されたのは「無口なピアノ」
みんなたち「えっ、猫とホテルじゃないの!?」

どちらもレコーディングがまだなので、音源化が待ち遠しいですね。
それにしても「友達がいない」はずの犬派の高橋さんに猫の登場する曲をかかせるようなご友人の存在がいるのはとても素敵なことですよね。
孤高ではあるけれど、決して孤独ではないのだということ示しているようで。
澄み切った静けさに聴衆を見事に包み込みながら、「夜は優しく」~「la fiesta」の流れへ。
いやあ、アップテンポなロックナンバーを敢えて封印したのかな? という感じのメロウな曲が続きますね。高橋さんの詩人のような世界観を堪能させてもらった、とは建樹さんファンのお友達のお言葉。
まるで昼下がりの野外映画のような物語性の高い美しさだ。高橋さんのもつ「遠景の音楽」としての側面が強く打ち出されているように感じられます。

「例年大晦日スタパのお昼のライブに出ていたんですが、去年は事情があって出られなくって。きょうは大晦日のお昼下がりの雰囲気をフラッシュバックするような感じで」

なるほど、昼下がりのようなメロウでダウナーな優しい空気はその点をふまえていたんですね。それにしても日本の音楽家でこんな表現を奏でられる人、ほんとうにこの人ただひとりしかいないよね。「la fiesta」のこの情熱と静けさを両立させた美しさ、ほんとうに大好きだ。(この「喜びはいつも痛みの中に」ってとてもシンプルかつストレートな言葉を軽やかに響かせてしまうところ、改めて圧倒されました)
まさしく「ある種の熱」!!! こんなにもご自身の楽曲の根底にあるテーマを美しい言葉に落とし込めるだなんて、高橋さんはどれだけ深い言語能力と洞察力をお持ちなんだろう。

「どうもありがとう」
(この言い方めちゃくちゃ美しかったですね、歌うように軽やか)
「よし、じゃあ奴を呼んでみましょうか。きのう誕生日を迎えた愛すべき同じ歳! 小林建樹!」

ここで、満を持して呼び込まれた建樹さんがピアノへと。

高橋さん「いろいろと勝手なことを言ってしまいましたが……」
ファンのみんなたち(大体あってる!笑)
高橋さん「こうして久しぶりにお会いできて一緒にセッションの練習なんかも出来て」
建樹さん「いろいろね、お互い流れに身を任せてきましたが――真面目になりましたよね」

両者、愛想笑いを交わしあうがなんだかすごくぎこちない。笑
建樹さんの方からはひしひし「ええからはよ演奏させて」オーラを感じるぞ!笑

高橋さん「僕は真面目ですよ? 小林さんも相当じゃないかなぁ」
建樹さん「そんなことないけど……」

「真面目ですね~」って言われるくらいものすごく練習する人なのにね。照れ隠しなのはみんな知ってるのやで。

高橋さん「僕は小林さんとは電話して話したりとか一緒に食事に行ったりとかはしないんですけど、ふとした時に小林さんどうしてるかなって意識してますよ。どうですか? 僕のこのラブレターは」
建樹さん「いやあ……まぁ和音――コードとかはね、共通点感じますけど。こういうのが多いじゃないですか」(ここでさらっとピアノを弾く)
高橋さん「それはちょっとあなたに言われたくはないかなぁ」

舞台俳優のような澄んだ美声での美しいせりふ回しに、いつも通りだけれど明らかにぎこちない声色の関西弁まじりで答える建樹さん。
このおしゃべりのトーンもテンションもまるでちぐはぐなふたりの噛み合わない会話、おもしろすぎるぞ!笑 さながら作画のちがうマンガのキャラクターが同じ画面にいるみたいだね。
冗談を交えながらも、話題は再会までの7年あまりの時間について。

建樹さん「世の中ずいぶん変わってきたので、合わせるのか自分の道を行くのかの戸惑いがありました」
高橋さん「周りから見れば100パーセント我が道を行っているように見えるかもしれませんが、そういう人にも迷いがいろいろあるんですよね」

同意を示しつつも、なんだか噛み合わない?笑
(このくだり、おそらく高橋さんは意図しないまま、すごく重要なお話が引き出されていましたよね。わたしは後になって「カナリア」の歌詞を思い出しました。カナリアとソングライターが2022年にやっと音源化されたことは「いまこの時」に届けたい歌になったからなんだろうな)

建樹さん「いまいち盛り上がらない……w」
(鍵盤に手をおいてすでに準備に入っている)
高橋さん「もっとしゃべってくださいよ」
建樹さん「決めきってライブをやるのでアドリブに弱いんです」

ライブに備えて曲順からMCの内容まで完璧に決めて何度も通しでリハーサルをする、とおっしゃってますもんね。
自由気儘に見えるけれど、実はとてつもない努力と鍛錬の積み重ねで完成させてくるのが建樹さんのパフォーマンスの秘密なんだなぁ。ローリングストーンズのような予定調和ではない不協和音のセッションが好き、という高橋さんとは対照的ですね。
やがて、デビュー時期は高橋さんのほうが数年早かったという話に。

高橋さん「じゃあ僕が先輩風ふかしちゃっていいですかね」
建樹さん「いいですよ」
高橋さん「や、冗談ですけど」

戸惑ってる!!!笑 
いい感じに受け流してくれる山田さんとは違うよねそりゃ。それにしたって主催者である高橋さんにめっちゃ圧されているぞ、こんな建樹さんすごくレアだよね。いつもはみんなを置いてけぼりにする側なのに。笑
ここで披露されたのは「みんなが喜んでくれると思って準備してきた」という「新しい世界」
これがほんとうにイントロの入り方から斬新でみずみずしくって素晴らしかった!
建樹さんの抜群のリズム感で音符の上を跳ね回る、即興性を感じさせるピアノと高橋さんの音楽性ってびっくりするほど相性が抜群だ。のぼりつめていく音の心地よさが極上なんです。
それにしたってなんでこんな歌がうまい人が後ろでピアノ弾いてるねん、おかしいやろがい(ごめんなさい。笑)と思っていたところ、「離さない♪」のくだりからコーラスが入り、そのまま二番は建樹さんが!
声質も歌い方もぜんぜん違うのに(建樹さんはおしゃべりと歌声の両方に独特な抑揚がありますよね)あまりにも美しく、曲の世界観を完璧に乗りこなしている!!!
いやあ、ライブに先駆けての予習だったムーンシャインキャッチャーRでの「ハロウィンベイビー」と「Feeling Sad」も衝撃的でしたけど、ほんとにすごい、「新しい世界」のあまりにも鮮やかな扉が開かれてしまった。

youtu.be


(ていうかラジオは予告とちゃうくて豪華すぎる「歌ってみた」やったんかーい! ってお友達とめっちゃ突っ込んだ。笑)

この恐ろしく難しい曲をピアノを弾きながらここまで完璧に、完全に自分の表現へと落とし込んで歌える人がこの世にいたんですか!?
パートごとに交代し、コーラスで重なり合い――あまりに完璧な構成にこちらはもう唖然としてただ聞き惚れるしかない。
ピアノの伴奏から歌から、ただ「カバーした」の領域を遙かに越えてあまりに堂々とかつ悠々と曲の世界を自身の色に染め上げて泳いでいるんですよ。こんなすごいセッションみんな見たことある? わたしは初めてだよ!
たびたび共演している親友、山田さんの『良き伴走者』としての役割とはまるで違って、高橋さんにとっての建樹さんは見たことのない景色を繰り広げ、風穴を開けるかのように楽曲に新たな命を吹き込んでしまう恐るべし『競演者』なんですね。
ラジオでもおっしゃっていた「同じようには歌えない、違う人なんだなぁと思った」という異なるアプローチでの『歌』の魅力が見事に生きている。
聴衆をあまりの驚きと感動で唖然とさせたところで、建樹さんはここで一旦退場。

高橋さん「いやあーー自分以外の人が新しい世界を歌っているのを初めて見ました。おもしろいものですね。オトコマエでした」

対バンの経験は数あれど、よりによってあの大曲に挑む人はいないですもんね。しかも「ただ歌がうまい」のレベルを遙かに越えた怪物みたいな人ですから。

高橋さん「40代はアルバムを四枚出して、ほかにも色々なリリースが出来てすごく充実な時間を過ごせました。とりあえず50までは頑張ろうと思っていたらここまでやってこれて――きょうは無礼講だけれど、あまり昔のことばかり話すのはかっこ悪いでしょう? なるべく未来のことを考えたいといつも思っています」

過去に囚われていてばかりではいけない、と自分を律した上で未来を見つめて居たい、そんな新作のアルバムを今年はリリースしたいとのこと。
おお、高橋さんもまた『未来の自分が生み出す音楽』へと希望を託してくださっているのですね。
先月の建樹さんがライブで聞かせてくださった『人生の土台はいまとこの先の未来にあることに気づいた、だからこそ未来に希望を託せるように歌をうたっていきたい』というニュアンスのお言葉と重なりますね。
最後に披露された「怪物」は20代の自身へのアンサーソングだとのことですが(確かに夜に生きるもの~ベッドタウンには満ち溢れる狂気を感じますもんね)持て余してしまうほどの鋭く強すぎる感受性と焦燥感と痛みの中でもがく姿、そこから解き放たれて軽やかに、のびやかに音楽を鳴らすようになった姿は建樹さんと高橋さんの双方に感じます。この怪物たちふたり、個性は全く違えどお互いにシンパシーを感じられる部分はあったのかもしれないな。
ここで本編は終了、すぐさまホストである高橋さんがステージに。

高橋さん「きょうは本当に2023年のいいライブ初めになったと思います。来ていただいて、配信でご覧いただいてありがとうございます」

最後にこの人と、この男とセッションを、と満を持して建樹さんが呼び込まれます。

建樹さん「きょうすごく寒かったので」
高橋さん「それは禁句で」
建樹さん「なんでかっていうと候補日の中で27日は僕の誕生日の翌日なんですって言ったらいいですね! って言ってもらえて。嬉しいなぁって思っていたらどんどん道が凍ってきたからもっと早くしておけばよかったんかなって。笑 禁句ですか? これは」
高橋さん「いいえ、そんなことないですよ」

あ、若干慣れてきてる!笑
セッションがすごく楽しみだったという建樹さん

建樹さん「こういう真面目じゃなくて癖のある声の人に自分の曲を歌ってもらいたかったんです――99年の曲で、デビュー前の研修期間みたいな頃に提出した曲なんです」
高橋さん「代表曲のひとつですよね」
建樹さん「R&Bシンガーって言われたことありますからね。デビューするといろんなカテゴライズをされちゃうもんなんだなぁって」

(もしや満月では!?)

高橋さん「ソロシンガーってバンドマンと違って横のつながりがなくて孤独なんですよね……シンガーソングライターは互助会が必要ですよね」
建樹さん「バンドマンと違ってそれぞれに宇宙があるから」

と、やっと会話がかみ合ってきたのにw 話がかぶってしまう事態がここで発生。

高橋さん「かぶったことに気づくぐらいになりましたね」

歌ってもらえることになって本当にうれしかった、という建樹さん。
前回は高橋バンドに加わっての一曲のみだったのが(「微熱」のセッション)今回は高橋さんの声で歌ってほしい曲をリクエストしたっておっしゃいますもんね。
ここでちょっと言わせてほしいんですけれど、これは先月の建樹さんのワンマン後のわたしの発言です。

ただの偶然だと思うんですけど、言うてみるもんやなって笑

高橋さん「タイトルに出てくるフレーズが最初は出てこないんですね、そこが素敵だなって」
(満月じゃん!!!)

なんでこんなにさっきからうるさいのかというと、わたしの中での「高橋徹也の声で聴きたい小林建樹の曲」のナンバーワンは満月で、7年前からずっと熱望していたんです。

高橋さん「小林さんのファンのみなさん、すごく大目に見て下さい」
「そんなことないよ!」(ほんとうに小声で言いました、ごめんなさい。笑)
建樹さん「それでは聴いてください。やっと歌ってもらえます。『満月』」

高橋さんの澄んだ美声でのあの美しいハイトーンの歌いだしがフロアいっぱいに流れ出した瞬間、空気の色がみるみるうちに変わるよう!
主旋律を建樹さんが歌い、そこにかぶさるように高橋さんの歌声がふわりとやわらかに響くさまは夢のようで、現実だとはおおよそ信じられない。
コーラスに、ユニゾンに、と変幻自在に表情を変えながらあの美しい澄んだ声が響き、建樹さんの声と重なり合うことでとてつもない魔法が生まれている!
いやあ、「新しい世界」で開かれた扉の更に向こう側がこんなにも鮮やかに繰り広げられてしまうだなんて。7年前のわたし、おめでとう! おまえすごくセンスがいいぞ!笑
建樹さんのイノセントな情熱は高橋さんのどこまでも澄んだ清らかな美しい声で歌われることで、ここまでの新しい次元の扉を開いてしまえるんですね。
曲の世界をご自分に引き寄せて乗りこなしてしまう建樹さん、静かに降りていくことで歌の世界と合流する高橋さんというアプローチの違いが見えるよう。
ここまでお互いの持てる力を最大限まで高め合い、目の前の世界をたちまちに塗り替えてしまうような奇跡のセッションがあるんですね。それなりに長く音楽ファンをやっていますが、こんな瞬間を目撃したのは生まれて初めてです。
皆が感動と興奮の余韻がおさまらない中、高橋さんのライブではお馴染みの写真撮影タイムへ。
ぎこちなくアイコンタクト→高橋さんのほうから手を取って握手のながれに我らはみなにっこりしながら夢中でシャッターを押しまくりました。

 

「皆さん最高です、また会いましょう」の言葉と笑顔に包まれるようにして、本編は無事終了。
さて、感動と興奮でじゃっかんの千鳥足になりながら物販に行くと建樹さんのほうはCDが全部売り切れ! そりゃそうだよ、あんなすごいライブみたらみんなファンになっちゃうもん。奥が建樹さん、手前が高橋さんだったため、まずは建樹さんのほうからご挨拶させていただくことに。

「建樹さん、CD売切れちゃったみたいなんでプレゼントだけお渡しさせてください。お誕生日おめでとうございます、それと早めのバレンタインです」
(おふたりの楽曲のイメージのハンカチ+@とバレンタインチョコをそれぞれにお渡ししました)
「去年のライブも毎回新しい建樹さんの表現が開かれていくのを見せていただけて、本当に素晴らしくって。どんどん進化し続ける建樹さんに出会えて本当に嬉しいです、素晴らしかったです。今年もほんとうに楽しみです。高橋さんの歌う満月が聞きたいって7年前の共演の時からずっと夢見てたんですけど、配信に有観客のライブにソングライターの音源化に満月にってわたしの夢が全部叶ってほんとうにびっくりしてうれしくて」
遠慮がないのでツイッターと同じ勢いでご本人の前で話すオタクです。笑

建樹さん「どなたですか?」
(えっ!?)
一瞬なんのことかわからなかったんですが、ツイッターのハンドルネームのこと!?
「あの、ハンドルネームですか? はずかしいのでこの場では無理です! お手紙に書きました!笑」

みなさん、サインの名入れ以外でアーティストさんにお名前を聞かれたことってありますか? わたしは生まれてはじめてでした。笑
(どうもわたしの前後の方にもお名前を聞かれてらしたようです。ツイッターでふだんからやり取りしてくださいますからね、気になりはったんかな)

これからも楽しみにしています、とお伝えした後は高橋さんの方へ。
待っている間に漏れ聞こえる会話もみいんな、とても丁寧で心のこもったお優しいものばかり。こういう時ってサインを書く1分くらいの時間で終わりのことがほとんどなのに、おふたりともおひとりひとりとすごくじっくりお話してくださってます。お優しい~!
おふたりそれぞれに「初めて見たけれど素晴らしかった」とお伝えする人、20年以上前から建樹さんがずっと大好きだとお伝えする人、5日の鹿島さんのゲスト回に行きます、と高橋さんに伝える人が多かった印象かな。お誕生日プレゼントを渡されている方もたくさんいらっしゃるよう。

「また一緒にライブやってくださいね!」
「4年後くらいに」
「オリンピックw」
(もうちょっと詰めてほしいよねえ)
「ツアーとかもやってください」
そんな中、前で高橋さんとお話されているのはフォロワーさんだぞ。

あきさん「タカテツさん、小林さんともごはん一緒に行ったりとかしましょうよ~」
高橋さん「うーん、それは」(口ごもる)
「よし、山田さんに間に入ってもらいましょう!笑」

あきさんとおふたりの会話がかわいすぎてわたしはずっとニコニコしながらがまんできずに後から援護射撃をしてしまった。笑
それが許される優しい空気だった、ということに尽きるんだよね。

「4年ぶりに会場で見させていただきました。高橋さんは、良い意味で変わらないまま、研ぎ澄まされた不変の美しい音楽を鳴らしてくださっていることに感激しました。素晴らしかったです。さっきも話してたんですが、わたしの念願だった満月も新しい世界も最高に素晴らしかったです。実は先月の建樹さんのライブで建樹さんにお願いしてみたら『歌ってくれなさそうだけど』って言われたんですけど。笑」

思わず口が滑ったw けど場の空気は和やかです。

「建樹さんファンのお友だちが高橋さんってどんな人なの? って興味を持ってくれたからyoutubeやおすすめの曲を教えてあげたらすごくカッコいいねって言ってくれて、おふたりとも大好きだから本当に嬉しかったんです。共演してくださって本当にありがとうございます」

新しい音楽に出会うきっかけが生まれるって、本当に嬉しいですよね。

「高橋さん、遅ればせながらお誕生日おめでとうございます。プレゼントと早めのバレンタインです。高橋さんはこんなにかっこいいのにかわいいものがお好きなのでわんちゃんです(わんちゃんのイラストの可愛いチョコ)、でもって上野に行ってきたのでパンダです!」

テンションが上がってきたのでプレゼントを解説するわたし。笑(パンダのメモ帳を美術館で買いました。笑)
高橋さんからはしばらくライブに行けなくて持っていなかった夜に生きるもの/ベッドタウンの20周年エディションを購入させていただき、終始和やかに嬉しそうに接してくださるお二人に目一杯に感謝をお伝えしたのちによろよろとホテルまで帰りました。

当日はとにかく胸がいっぱいで心がふわふわして、感情が赴くままにこの気持ちを話さなければ気が済まない! となっていたのですが、翌日までその余韻はいつまでも醒めず、道を歩きながら幾度となく涙ぐんでしまうほど。
あんなにも素敵な人たちに出会えて、大好きになれて、わたしはなんて幸せものなんだろう。
お二人の生み出してくださる音楽が心から大好きです。7年越しに届けてもらえた夢のような時間に、心から感謝しています。

僕の夢が叶うのは誰かのおかげじゃないぜ。おふたりともほんとうにありがとうございました。
 

ameblo.jp

手応えと喜びを感じてくださったのなら何よりです。
しばらく制作モードに入るとのことですが、そろそろツアーをやってほしいなぁ。
「お互いの現在地を確かめ合う場」をとおっしゃってくださるのは嬉しいな。我らはわがままなのでもうちょっと間を詰めてくれてもいいんですが。笑
 

 
音楽ではあんなにもしっかり噛み合って化学反応を巻き起こしているのにおしゃべりはいまひとつ噛み合わなくて会話がドッチボールになるの、最高でしたね。笑
やっぱりあの夢のようなセッションはお互いに大きな刺激になったんですね。またどなたかとの共演が見られるといいのになぁ。
(真面目じゃない癖のある声、と評されていたのが「声が綺麗」とセッションを経て素直な表現になられているのがなんだかおもしろい)
(思い切り余談ですが、「声綺麗わぁ」が可愛すぎて、お母様もしゃべり方同じなんやろなってめちゃめちゃほっこりしました。笑)
そして建樹さんも制作に入られるとのこと! うれしいなぁ

振り返っている間も胸がいっぱいになってしまうような、本当に素晴らしい時間でした。そしてこの夢のようなライブは、まだ配信で見ることができます。

『高橋徹也 × 小林建樹』のチケット情報 - イープラス
わたしもあと何回かは期限ぎりぎりまで観ます!

本当に家に帰ってから毎日見てたんですけど、こんなに配信終了を惜しむ声が上がってみんながリピートしまくる配信ライブ、そうないぞ。
今後も配信は続いていってほしいなぁ。


書きたいことがありすぎて端折ることが一切出来なかった。笑 ので本当に長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。

 

小林建樹『冬のワンマン 〜UNERI〜』@下北沢Com.Cafe 音倉

とんでもない音楽センスとライブパォーマンスの実力の持ち主ながら新作のリリースやライブ出演は数年置き、10年ほど前の発言では「人前で演奏するのは長らく苦手だったけれど、ようやくその意識も薄れてきた」とおっしゃるほど。
年に何枚のアルバムとプロモーション、ツアーの開催、という契約に縛られることを(渋谷AXをひとりで満員にする実力を持ちながら)自ら降りられたことを考えれば、表舞台に出てきてくれることを望むこと自体が酷なのかもしれない。
おそらく頭の中では常にあらたなアイデアと共に音楽が鳴り響いていて、それらのアウトプットには限りある人生の時間ではきっとすこしも足りなくて、何年もの間、SoundCloud にアップされた実験的なインスト楽曲もそのごく一部だったのだろう。

待つことには慣れているので、無理のないやり方で音楽を続けてさえくれればそれでいい(めちゃくちゃもどかしいけど。笑)と、2016年の高橋徹也さんとツーマンライブから次の展開を待ち続けていた中、変化の兆しが見え始めたのはコロナ禍2年目の2021年頃から。
過去の未発表楽曲や初期のMVが続々とアップされ、新作の制作をされている、との発言もあり、否応なしに「次」への期待は高まるばかり。


(確かSoundCloudに未発表曲がアップされて小躍りした時だな)(これを言ったら半年後に実現したのでびっくりした。笑)
満を持しての初めての配信ライブの4ヶ月後には2回目の配信 、まもなくして熱望した有観客+配信ライブが開催決定!
『先の見通しがたたないし、健康体ではないのでリスクは避けたい』と3年前の春から関西を出ておらず、ほとんどのライブにも参加していないわたしでもそうときたら話は別です。
いざ、3年ぶりの東京、6年ぶりのライブへ。

建樹さんの東京でのライブはすぐ売り切れてしまうと噂に聞いていたため(今回もお昼過ぎには完売)、気合いを入れまくって取ったチケットの整理番号は1番。
いやここは……遠慮はせんとこ、と一列目の真正面を確保。
ステージ向かって(客席から見て)左手にグランドピアノと配信のモニター、中央にはギター。
定刻少しすぎ、袖から建樹さんが登場。

本日のファッション:黒いジャケット、Tシャツ、細身のジーンズ、グレーにピンクのNマークのニューバランス

4月の配信でお姿を見た時、ツーブロックにものすごくびっくりさせられましたが(似合いすぎ)(長くお見かけしない間にえらいシュッとしはったけど誰!? ってなったよね、と女子たちは盛り上がりました。笑)こうして間近で拝見するとほんとうにスタイリッシュな雰囲気になられて……。とは言え、持ち前のやわらかな雰囲気は変わることはなく、『かわいい大人』なままなんですよね。
緊張と期待にざわめく中、「すばらしい日々」からライブはスタート!
あまりにもドキドキしすぎて直視すると緊張するので目を瞑って音に浸りたい気持ちVSこのパフォーマンスをしっかり目に焼き付けたい気持ちのせめぎ合いが大変。笑
手拍子が自然に方々から響きだすのも有観客ならではですね。
それにしても、常々ご本人が話されている念入りな練習の成果だろうとは思いますが、歌声の伸びやかさも、のびのびと鳴らされる音の気持ちよさも半端ない!
瑞々しさとゾクゾクするような色気を孕んだ2022年の最新型の表現が鳴らされている!
音の波に身を委ねる中、すぐ目の前には照明の反射レベルではないだろうこれは、と思うほどにキラキラ輝く建樹さんの瞳や、気持ちよさそうに伸びやかに歌われる表情、真剣に歌の中に込められた思いに向き合いながらのパフォーマンスの合間、伴奏の折にふっとこぼれるリラックスしたようすの笑顔。
そのすべてがまぶしくて心地よくて、マスク社会にここまで感謝したことがあったろうかと思うレベルで表情筋が大変なことに。

「いままでになく、しっかり目を見開いてお客さんの方を見て歌を歌った」
とご本人のライブ後にも発言があったように、こうしてオーディエンスを招いてのライブには特別な思いがあったことがひしひしと伝わるよう。
「今年のライブから、初期の曲が無理なく歌えるように思い切ってグッとキーを下げた」
とは配信ライブでも度々触れられていますが(それでも高くて綺麗で、まったく衰えなど感じさせない力強い声!)、単純にキーを下げるだけではなく、いまの自分の気持ちや表現の在り方に真摯に向き合ったから歌える「2022年の最新型」の力強くて美しい表現に進化されているのを見せてくれるのだから、こちらもただ心を奪われて見惚れるほかないのです。
衰え知らずかつ、凄まじいアップデートが施されたパフォーマンスの素晴らしさはもちろん、視点がユニークでどこかクスッとおかしい、独特な関西弁混じりのおしゃべりももちろん変わらず。(真面目な話になると照れ隠しのノリ突っ込みが入るところ、めっちゃいとおしい。笑)
建樹さんはおしゃべりにファニーな魅力が溢れている人だよね、とはフォロワーさんともお話していましたが、あのとんでもないかっこよさとの緊張と緩和のバランスがたまらないんだよな。

口内炎がすごく出来るので、箱買いしたリンゴを毎日食べて薬の代わりにしています。風邪も引きにくくなる気がするんですけれど……あんまり人に会わないからw」


なるほど、なんだか唐突にTwitterにアップされたリンゴはそういう!笑 
会場からはさざなみのような笑い声。まあ、お一人での制作が多いからそうなりますよね。笑
こういった反応があることも有観客ライブならではの心地よいあたたかさ。

その後も、ウェブラジオ番組ムーンシャインキャッチャーRで告知&解説があったとは言え、意外なラインナップの、初期と最新作を織り交ぜたラインナップが続く選曲にざわめきと喜びが止まらない。
ギターのカッティング的な演奏で刻まれるリズムと歌声との一体感や曲と曲との流れるような繋ぎにほんとうにたまらない高揚感を駆り立てられてしまう。
この人はなんでこんなにも一人で大きな大きなグルーヴを生み出せるんだろう。これはまさしくたった一人で巻き起こされる圧倒的なUNERI! 歌声を楽器のように響かせてしまう天性のリズム感と一体感、この言葉で言い尽くせないほどの心地よさよ。
20代当時のヒリヒリした切実な焦燥と痛みがありのままに描かれていた楽曲たちにあらたな命がみるみるうちに吹き込まれ、最新の楽曲たちともシームレスに繋がって聴こえてくる! 本当にライブをここまで仕上げてくるのにどれだけの努力の積み重ねがあったのだろうと驚かされるばかり。
今の建樹さんの鳴らしてくれる音楽にはすべてに視界が開けていくような心地よい開放感があってすごく優しい。
心地よさとハラハラするようなかっこよさをここまで両立させることができるなんて! と息を呑んで見守る中、これまたすごく珍しいカントリー調な「ジョニークローム」で第一部が終了。

休憩タイムにも「すっごくかっこいい!!」とおしゃべり&Twitterに早口で喋ることを我慢できず(笑)キャッキャしているうちにピアノにセットチェンジしての第二部。

「マイクをセットする時、少し前屈みになった方が歌いやすいんでこだわってます」


なるほど、猫背には理由が。笑

二部の一曲目に選ばれたのは名曲「replay」
こぼれ落ちるようなピアノの音色も、切々とメッセージを込めて届けられる歌の美しさも堪らない。ラジオでも中々歌えないけれど今度は歌いたい、と語られていましたが、確かにこれはオールタイム歌える曲ではないよね。

「しばらく歌えてなかったんですが、キーを落として歌えるようにしました」

照れ隠しもあってか多くは語られない印象ですがここには「ありのままの葛藤を込めた歌に今の自分が心を寄せる」ことへの苦しさもあったはずだよね。
関連するように思い出したのは、9年前のバンド形式でのライブでの発言

「最近よく考えるんだけれど、人間誰しもリスタートは出来てもリセットはできない。僕が神戸にいた頃に自宅で作った『sweet rendez-vous』でデビューした事実は変えられない。色々と思うところがあって、この曲は長らく歌えなかったけれど、今日は一人寂しく歌います」

  詳しくは当時のわたしのブログで。 rai-xxx.dreamlog.jp
もしかすれば、このreplayは「リセットができない」ことを胸に刻んだ上での何度目かの音楽家としてのリスタートのためにこの日こうして、こんなにも切実で優しい響きを込めて歌われたんじゃないのかな? だなんてことを何日も経ってから思ったり。

続いて「イチゴ」の披露の前に、少し長めのMC

「一期一会という言葉は千利休の茶室での茶会から来ていて『一度きりの再現性のないもの=ライブ』が語源になっていることを知り、面白いと思いました」
「最近になって重大なことに気づいたけれど、人生の土台とは過去ではなく、いまこの瞬間とこれから先の未来にある。たとえばいまこの瞬間、ライブという一期一会の時も土台はいまこの時にある。それでもただ、いまと未来のどちらかだけを糧にしていたら生きていくのもつらくなる。未来に土台を置くのは大人の宿命ではあるけれど、こういったライブのようにたまにはいまに土台を置くのもいいんじゃないかと」


この人の視点と語り口でしか語れない言葉であるのと同時に、『一期一会の次にいつ会えるかわからないこの瞬間』として目の前にいてくれた人が『未来』を見つめて、その先に希望を託してくれることが心から嬉しい。
「あんまり人と会わない」人がこうして「たまには人と会ったりして未来に楽しみの土台を置いて」と言って下さるのが本当に大きなことなんですよね。
(わたしもコロナ禍になって人とあまり会わないからすごくわかる……。人様と会っててお話するのめっちゃ楽しい)

「前回のライブの時、お客さんにすごく怒られたんです。こんなに何年もやらないなんて死んじゃうかもしれないでしょ!? って。その時はわかってますよ〜なんて答えてたんですが、6年やってなかったんだから……ちっともわかってなかったんですね。笑」


会場内からは当然のごとく(?)ざわめきのような笑い声。それ、言うんや! みんな思ってたけど言うたらあかんと思ってたんやけどな! とびっくり。笑
そうか、言えばいいのか! わたしも高橋徹也さんとまた対バンしてくださいってお会いできたら後で言おう!笑(※これはフラグです)

この日に生でじっくり見させていただいて気づいたのですが、建樹さんはピアノを弾かれている間、ペダルを踏んでいない方の足や片方の手で自在にリズムを取られているんですね。
なるほど、エフェクターのように自在に音の響きを膨らませていく仕組みはこんなところにもあるんだな。ほんとうに軽やかで心地よくて、心ごと弾ませてくれるみたいなパフォーマンスだ。

満月〜ヘキサムーンと軽やかな美しさが際立つ楽曲が続きます。
建樹さんのライブは月の綺麗な夜に行われることが多いですが、月は建樹さんの音楽にとって欠かせないモチーフのひとつなんでしょうね。

そして、嬉しい未来の展望の話はまだまだ続く。

「ピアノの曲を作るのが好きで、来年には各星座の特徴を自分なりに分析したルールに基づいての12曲入りの書き下ろしの星座のアルバムを作りたいと思っています」


大きな画用紙を買ってきて表を書いて各星座の決まり事を書いてから曲を作っているのだとか、面白いなぁ。昔から占星術にはかなりお詳しいようですが、イマジネーションの源泉を沢山お持ちなのですね。

「歌のアルバムも作っていて、こんな感じで……」

ピアノの音色に寄せて、内省的で少し苦しい心境が歌われる新曲がここでお披露目。

「歌詞の内容が暗い……後ろ向きなんですが、いまの時代の空気が反映されていて。今年は本当に洒落にならないヘビーな出来事がたくさん起きて、いまこの時も平時とは言えない状態が続いていて、心の中を覗くと大きなうねりの中に飲み込まれているように感じます。ライブのタイトルも渦潮とか鳴門海峡が一番ふさわしい気がするけれど、鳴門海峡はさすがにどうかと思ってUNERIにしました」

「ほんとうにこんな苦しい状況だけれど、きっと10年経つ頃には『あの頃は大変だったね』と言い合えると思う、そんな未来に向けて歌っていけたらと思います」


やわらかく解けたような優しい表情とともに告げられるあまりに「らしい」優しい言葉(後から気づきましたがここで語られたメッセージは「告白」の歌詞と同じだ!)(過去に残したメッセージに託した言葉が未来の自分を後押ししてくれることってあるんだね)と共に歌われたのが「祈り」
このところ毎回、この曲の前のMCでは平和を願うメッセージが丁寧に語られ、その度に胸がいっぱいになります。

4月のライブでも「戦争が始まってしまったこと」への悲しみや平和を祈る気持ちが音楽を届けることへの原動力へと繋がったことはお話してくださいましたが、長年人前に出てパフォーマンスをすることに消極的になられていた方が(高橋さんに何度も誘われてはその都度断ってたんだぞ! わたしは高橋さんにお礼を言いました。笑)(それでも何度も誘ってくれた高橋さんありがとう、泣いちゃう。)音楽家である自分がやりたい、できることは長年待っていてくれたファンに向けて歌をうたうことだと決断して、そのためにここまで表現を研ぎ澄ませてくれたこと、世の中の状況も相まって中々会場に来られない皆にも安心して楽しんでもらえる配信ライブの機会を作ってくれたこと、年の瀬にこうして、ついにお客さんを招いてのライブを行ってくれたこと。
そのすべてがほんとうにほんとうに嬉しくて堪らない気持ちにさせられてしまう。

美しい響きに皆がうっとりと酔いしれた後は、ファンクラブ特典だったという幻のクリスマスソング、Holy night。(会場からは喜びと驚きのどよめきが!)
この美しくて優しい響きはこの音楽に導かれて集まったみんなへの最上のクリスマスプレゼントだね。
続いて本編最後に選ばれたのはオールタイムベストな「歳ヲとること」
個人的に、この曲は建樹さんがお歳を重ねるほどに柔らかく優しく心地よく聴こえます。
原曲を聴くと、(メジャー時代の音源全般に言えることですが)、才能に溢れた青年のありのままの苦しみや葛藤が生々しく鮮やかに響いているように感じるのですが、いま歌われる時には、その苦しみから解き放たれた優しさと希望が感じられるんだよね。
「その時」に繰り返し出会えること、乗り越えた「いま」が煌めいていること、その両方を教えてもらえることがこんなにも嬉しい。

4月は「バトン」、8月は「青空」
毎回本編最後は「歌うこと、届けること」への力強くて優しい思いと共に、「また会いましょう」の気持ちが深く強く込められていて、それがどんどん強まっていくように感じられてほんとうにうれしい。
(4月のライブ後、「また今度ってほんと!? いつ!?」とものすごく疑いながら画面越しの建樹さんに手を振ったわたしたち)(そしたらまた今度は4ヶ月後だったよ! ほんとうに泣いちゃったよ)
こうしてわたしたちは約束を交わし合い、音楽に導かれて生きていくんだな……きっとまた来年にもたくさん建樹さんの音楽に会えるんだな、という喜びで胸がいっぱいになりました。

まもなくして本編アンコールには物販用の新作のトートバッグを肩にかけた建樹さんが登場。

「イラストは板タブレットで自分で描きました、持つと思わず体をうねりたくなるような。笑」
(ぐいっと体をうねる仕草)


こんなにかっこいいのにほんとにチャーミングな方だね。にっこにこですよもう。

「お知らせがありまして……来月またライブをやります。1月27日、高橋徹也さんとコロナの関係もあって延期になっていた対バンを7年ぶりにやります」


わたし、建樹さんに直談判しようと思っていた熱望していた対バンがまさか決まっていたことにびっくりしすぎて涙ぐむ。会場からもどよめきが一気に起こります!
続いて歌われたのはこれまた久しぶりの「目覚め」
瑞々しくて美しくて切ない響きに込められているのは紛れもなく「いま」の景色と感情で、そのことがとても嬉しいし、美しさに心を奪われてしまう。

さあ、本当にほんとうによかった……けれどまだみんな帰らない。笑
ご本人も想定外のWアンコールがここで。

「呼んでもらえると思ってなくて用意してなかった……ので、来月のために準備していた曲から」とstringをここで披露。 
静かに高らかに、祈りのように満ちていく音楽に場内は一気に心を奪われるばかり。
なんでこんなにも切なくて美しくて優しいんだろう。
この煌めきとあたたかさは、「いま」の建樹さんだからこそ鳴らせる特別なものなんだよね。


大充実の本編が終了、早速物販に列が出来ているようですね。
ひとまず対バンのことを……配信見てないであろう人たちにも知ってもらわないと……いやものすごく指が震えて文字打てねえ。ていうか足の震えがすごくてテーブルに手をつかないと立てない。(ほんとうだよ!笑)

「わたしはいま生まれたての子鹿!」

オーサカバンビはいそいそと物販に並び、全部ちょうだいをやりました。が、手が震えすぎてお釣りのお金を財布にまともにしまえない。笑
あわあわしていたら建樹さんがトートバッグの封を開けてくれた。(涙)(本来は並んでる間に自分で開けなきゃダメだよ。笑)

「高橋さんとのライブまたやってくださいってお願いしようと思っていたら発表されて嬉しくてびっくりして……今度も行きます。お友達ともずうっとまたやってほしいね、今度は建樹さんの曲を歌ってほしいね、何があうだろうねって話してたんです」
建樹さん「高橋さん歌ってくれなそうだけど今度話してみますね〜」
「ガンコだからなぁw」

ご本人自ら「今度は建樹さんの曲を歌ってみたい」って言ってたのに信用されてないあたり、さすがTTだよ。笑 すきです。笑


生まれたての子鹿はその後、尋常じゃない足の震えで必死に踏ん張りながらヨロヨロ歩きでホテルに帰りました。笑
友よ、また会おう……。(そしてわたしは大阪から帰宅した翌日に来月のパックツアーを申し込みました)(会場のチケットは取ったのでこの後配信も申し込みます)
 

12/11 下北沢Com.Cafe音倉セットリスト

第一部(ギター)
 1.素晴らしい日々(アルバム_リバース)
2.コスモス(Music Man)
3.約束(Window)
4.Mystery(Mystery)
5.Sweet Rendez-Vous(曖昧な引力)
6.絵になる大人(曖昧な引力)
7.ピカレスク(Music Man)
8.カナリヤ(流れ星トラックス)
9.ジョニークローム(シングルSPooNのカップリング)

第二部(ピアノ)
10.Replay(Blue Notes)
11.イチゴ(Rope)
12.満月(曖昧な引力)
13.ヘキサムーン(Music Man)
14.祈り(Rare)
15.Holy Night(特典曲)
16.歳ヲとること(曖昧な引力)

アンコール
1.目覚め(Music Man)
2.String(曖昧な引力)

tateki.net
本当に、まっすぐにこちらを見つめて歌を届けることを考えてくださったライブで、そのやさしいまなざしは会場だけではなく、配信で見ているお客さんにも向けてくださっていたんですよね。
建樹さんのライブと言えば東京のごく小さな会場で、がほとんどだったので、コロナ禍はとても苦しいことだけれど、この革新的な変化は本当に嬉しい。
わたしはライブから帰ってすぐアーカイブをつけて、多い日には1日2回アーカイブを見ています。こんなにしがみ倒してる配信ライブほかにない……。

そしてなんと建樹さんのライブは年明けにまたすぐ、配信とWで開催!

tateki.net

かっこいいんですよね、高橋さんの曲。なぜか文豪がエレキギターを持って唄っている。しかし文豪なので少し俗物から浮いた言葉を使う。そんなイメージです。


それです!笑 
高橋さんって存在そのものが小説や映画の登場人物のようなんですよね。曲から描き出す世界にもそれがあふれていて、我々を魅了する。

ameblo.jp

今回も何か刺激的なセッションができればと思ってます。勝手なイメージですが小林さんには妙な親近感も持っているので共演を楽しみにしています。


異なった個性と才能の持ち主とは言え、ブラジル音楽への造詣の深さなど、音楽への探求や冒険心には重なる部分があるんですよね。
そしてお二人のハーモニーがとんでもなく美しい。ほんとうに、いまから心から楽しみです。      

高野寛 「City Folklore」season 1. 2019/11/15 大阪桜ノ宮公会堂

会場となった桜ノ宮公会堂は結婚式なども開かれているというシャンデリアの灯りが美しい格調高い建物。カウアンドマウスさんは会場も楽しみのひとつですね。
場の雰囲気に合わせてか、パーティドレスのお客様もいらっしゃいます。いいなぁ。
やがて19時半過ぎ、サイドの窓にスクリーンが降り、ひときわ高いステージに高野さんが登場。
後ろの大きな窓にはライトアップされた緑の木々、まるで映画のセットのようです。

画像1


〜〜〜♪
(魔法のメロディのオケ)
高野さん「いまのは間違えました笑」

今回からの相棒、Mac bookは手懐けるのが難しい手強い相棒らしく、本番中にも苦戦のお言葉がちらほらと。笑
冨田さんプロデュースによる、フォークトロニカとも呼べるサウンドをライブで再現する手段として高野さんが選んだのは、PCとエレキギターでのパフォーマンス。
「30年やってきてはじめての試みがこの初日のライブ」とおっしゃいますが、新しい挑戦をとても楽しんでいらっしゃることが手に取るように伝わります。

「今日はアルバムの曲とともに、いまの気分で演奏したい曲を歌います」とのこと。
以外なところでは「寒くなってきたので」とあがた森魚さんの大寒町のカバーが披露されたりも。
おお、これは思いも寄らなかったからうれしさもひとしお! 素晴らしい!

最新作City folkloreは70年代のシティポップを踏まえての「いま」を映し出す音楽となっているのですが、高野さんのまなざしが捉えた「現代の街」について語られる場面もライブ中にはしばしば
(覚書のため、ニュアンスなどは正確ではありません)

「去年は大阪では豪雨災害が度々起こりましたが今年は関東で立て続けに災害が起こり、自分の住む街でも避難勧告が出ました。異常気象がこんなにも続いて世界はこれからどうなっていくんだろう」
「東京はご存知の通り、オリンピックで目まぐるしく街が変化していますが大阪も心斎橋の街がびっくりするほど様変わりしていて」
TOKYO SKY BLUEがOSAKA SKY BLUEになる特別サービスありがとうございます。えへへ。
「はれるや」は中目黒ではなく「西天満〜」に。これには思わずニヤリ。

目の前に映る景色、ライフスタイルの変化は当然音楽にも映し出されるもの。
楽曲の中に描かれている風景は当然「その時」のものです。とはいえ、歌い継いでいく中で「当時」には見えなかった新しい景色が見えてくるんですよね。

(Bye Bye Television について)
スマートフォンなんて存在しなかった2000年に作られた曲なのに『小さな画面』という歌詞はまるで配信の動画を見るスマホの画面のよう」

(キュリー夫妻を題材とした「ピエールとマリーの光」に関して)
「研究に身を費やしたふたりだったけれど、夫のピエールは落馬による交通事故であえなく、マリーは放射性物質を無防備に扱っていたため、内部被曝を患い命を落としてしまう。彼らの足取りをモチーフに、とても難航しながら曲が形になった」
(とても丁寧に言葉を選び、やわらかな口ぶりで)
「どんな風に伝えればいいのかわからないけれど、そうやってうまく言葉にできないことを表現するために曲を作っているのかもしれません」


高いステージの上でお話される姿はさながら講演会のようでご本人からも「講義かなにかみたい笑」とのお言葉。高野せんせーい!笑
久しぶりの「アトムの夢」はテーマの繋がりから選ばれた選曲でしょうか。
これももう21年前。311の災害など誰も想像出来なかったころに書かれていたことにただびっくりします。

(ハース・マルティネスのAl together aloneのカバーについて)
「ギターソロを完コピしました笑」


ドラムもいない編成なので当然アレンジは変わってしまう……とは高野さんの弁ですが、だからと言って物足りないだなんてことはあるはずもなく!(きっぱり)
数十年前の曲も新しい曲もみな、新しい試みに挑戦した高野さんが鳴らすことによってより大きな、新しい世界を色あざやかに広げてくれているのがありありと伝わってきます。

全編を通して感じたのは、ゆるやかな開放感と音の世界の広がりでした。
昨年の30周年は過去を振り返る中での迷いや痛み、それらを乗り超えてきたことのへの誇りのようなものが随所に感じられて何度も涙ぐみながら見ていたのですが、今回のステージに広がる世界には全篇にわたって「未来」を照らすまばゆいばかりの光が溢れていました。
なんで30年を超えてこんなにもみずみずしくてまばゆくて新鮮な音が鳴り響いているんだろう、と驚くばかり。
常に変化と成長を繰り返す学生たちとの出会いは大きな化学反応を起こしてくれたのでしょうか、「自分の信じるものを手に、光の射す方へ」という強い信念がステージいっぱいに広がるよう。
ステージの上で繰り広げられる音の世界はいままでとまるで違う奥行きと共に光輝き、より一層の進化を遂げたあたらしい「これから」の高野寛の音楽世界が体現されているように感じられました。
10年以上ずっと歌われてきた「停留所まで」が、やわらかにやさしく「いま」を照らす歌として鳴り響いていたこと、「夢の中で会えるでしょう」が優しいアンセムとして鳴り響いていたことがとても印象に残りました。


さてはて、二時間半近くの胸いっぱいのライブが無事終わりました。この素敵な時間をくださった高野さんにご挨拶とお礼をしたいぞ。サイン会に並びましょう。
とにもかくにもこの喜びをただ届けらればそれでいいのだけれど……お伝えしたいことを考えながら前に並んだ方々と交わされる楽しいおしゃべりを興味深く聞きながら順番を待っていたところ、なんだか感情が堰を切ったように溢れ出してきてしまいました。
どうしよう困った困った困った。
(去年初日の大阪で涙ぐみました)
(高松では号泣しました)
(はずかしいのでちゃんと笑顔でお話ししたい)
えーい仕方ないやい!

「お伝えしたいことをちゃんと考えていたはずなんですが、なんだか高野さんを間近にしたら気持ちがうまく言葉に出来なくなってしまって……(涙ぐんで来たのを我慢しながら)去年の30周年から先に進んで、あたらしい高野さんの音楽の世界が開いていくのが見られてすごく感激しました、来られて良かったです」
しどろもどろのこちらにかけてくださったのは、誇らしげな様子での「嬉しいです」のお返事。
こんなに嬉しいことがほかにあるだろうか。

昨年の大阪では「高野さんの音楽がずっと大好きで、いつでもいちばん新しい『いま』の高野さんが鳴らしてくれる音楽が大好きです」という旨をお伝えしたのですが、改めて同じ気持ちを感じたのとともに、『いま』の高野さんがいままで見たことのなかったあたらしい音の世界を見せてくれたことにすごく感激したライブでした。
これからの高野さんの活動がますます楽しみです。





さてはて、「また来ます」と高野さんにお伝えして会場を後にしたわけですが……ここに恵比寿ガーデンホールのチケットがあるじゃろう?

 

高橋徹也『The Endless Summer 2015』@京都SOLE CAFE

10月だというのに真夏のような陽光の照りつける京都。14時過ぎ、7部丈のセーター(二月の代官山と同じかな?)に細身のパンツ、クラークスのタカテツ登場。
ステージに用意された二本のギターのうち、エレキギターを構え、「ドライブ」から本編スタート。
弾き語りライブは初めてですが、だからといって物足りないなんてことは当然ありません。音数が抑えられてシンプルな分、メロディーと歌声の美しさがより際立つよう。伸びやかな高音とファルセットの美しさにうっとり。
二曲目、「人の住む場所」の高鳴りは初っ端から最高潮の盛り上がり。
歌声が毎回ハッとするほど美しいってしつこく言ってますが、生で聞くと本当にびっくりするほどなんですよ。
聴くたびに伸びやかさと力強さが増してる気がする!
続くチャイナカフェ〜夕食の後、と、テンション高めの曲がグイグイ場の空気を盛り上げてくれます。

MCの面白さは相変わらず

「寝つきは良い方なのですが、今日は京都に来るのでなんだか色々落ち着かなくて。果たしてこの会場に着けるのかな、みたいな気持ちになりました」

駅から遠いもんね……(そういう問題じゃありません。笑)
東京以外でのライブはやはり特別なんですね。静かに、それでもテンションが上がってるのを隠しきれないのがなんとも微笑ましいし、なんだか嬉しい。

「初めて来た一昨年は大統領夫人〜リリースツアーでしたが特にアルバム曲はやらず……去年の未発表音源発売記念ライブでもアルバム曲は特にやらず、今後もあんまりやる予定はありません。今回も新作の曲は特にやりません」

なんの為のリリースツアーだ!笑 自由だな!笑

無口なピアノ〜雨宿り、と未発表曲が続きます。この辺からギターがアコギに変わったのかな?
サンディエゴビーチ〜サマーピープルの夏の名残を惜しむようなしっとりとした静けさと熱を孕んだ余韻が心地良い。
「今の方が好き」というMy favorite girlは成熟した色気と軽やかさが溢れて、楽曲のきらめきが増しているようでした。

「普段窓のないスタジオに籠っているから」たっぷりと陽射しの降り注ぐ昼間の会場はとても新鮮で心地よい、と高橋さん。

確かにこのキラキラやわらかい光に包まれた時間は開放感と穏やかさがあってとても今の高橋徹也の生み出す音にあっている最高のシチュエーションです。初めて見た二年前のこの場所で感じた心地よい閉塞感、目の前に居るのにどこにもいないように感じたあのトリップ感のような感覚はどこへやら。
ぬくもりと笑顔がきらきら降り注いでいて、澄んだ色と空気に包まれた魔法がすっと解き放たれていくよう。
文字通り羽ばたくような軽やかな「ブラックバード」の高揚感、「ユニバース」のどこまでも果てしない広がり。
アンコール「真夜中のドライブイン」まで、のびのびと高らかに心地よく優しく音が鳴らされていて、とてもリラックスした良い雰囲気のまま過ごせた気がします。
音がキラキラした光に包まれていて、歌声はどこまでも伸びやかで高らかで。とにかく開放感と無限の広がりがあの場には溢れていたなと思います。
聞いていて心ごと舞い上がるような心地になれたあんな時間、中々無いんじゃないかな。

今後のライブのご案内も少しありましたが、次回の名古屋はバンドで行くので「遅れてきた修学旅行のよう」とすごく楽しみだそう。
学生時代そういうのに乗れなかったから〜とのことですが、それだけ今のバンドが仲良しで良い空気でやれてるって証でもありますよね。うむ、素敵なことだ。
その充実ぶりがパッケージングされたのが新作だと思っていいのかしら。

終演後は新作の先行販売ターイム!
「お釣りが無いのでぴったりある方からお願いします」
く、崩しておいてください……。笑 でもそれがTTなので仕方ない。笑 
勢い余って「ありまーす」とそそくさ物販へ

「お友達から山田さんとのライブよかったって聞きました〜またやってください、都合つけて行きます!笑」
(東京でも、のつもりでした)
高橋さん「彼とはまた回りたいと思ってます」と、にこやかに。
回る!? ツアーと思っていいんですか!?
「また行きます、ありがとうございました!」  と、(今日はしらふだしテンションがマシだったぞ!と。笑)ニコニコ状態でお話させて頂き、手土産もお渡し出来たので帰ろうとしたところで財布を開いたら千円札が沢山入っていました。

はっ!?

「両替しましょうか?」

何故かよく分からない行動力を発揮し、高橋さんに両替を申し出るわたし。笑100円玉もご用意がなく、お店の方に両替してもらってらっしゃいました。笑

 

まぁそんな感じで、最後に謎のオチをつけて(笑)楽しい秋の一日は無事幕を下ろしたのでした。

ライブの度に感極まった様子で投げかけて頂ける「みなさん最高です!」のお言葉が本当に嬉しくて、それも全て最高の音楽を鳴らしてくれる高橋徹也という音楽家の最高峰のパフォーマンスがあってこそなのですよ。
大人なので都合をつけて(笑)また必ず行くので、その時もまた「最高のオーディエンス」の一員になれたらな、とそう思いました。

 

 

10/3 京都SOLE CAFE(SET LIST)
1. ドライブ
2. 人の住む場所
3. チャイナ・カフェ
4. 夕食の後
5. 無口なピアノ
6. 雨宿り
7. サンディエゴ・ビーチ
8. サマーピープル
9. The Orchestra
10. My Favourite Girl
11. 角の向こうでワルツ
12. 夜のとばりで会いましょう
13. Praha
14. ブラックバード
15. ユニバース
EC. 真夜中のドライブイン

大統領夫人は知ってる 高橋徹也/松崎ナオツーマンライブ@2015/02/06 晴れたら空に豆まいて

代官山、晴れたら空に豆まいては初めての会場。
和洋折衷のリラックスしたいい雰囲気の箱で(後方にはお座敷席もあるよ)、ステージを覆うスクリーンには映画コーヒーアンドシガレットが無音状態で再生されているというお洒落なムードの漂う中、まずはお馴染み? 鹿島達也さんを含めた(今日はWヘッダーですね!)男性陣三人のバックメンバーを従えた松崎ナオさんが登場。
グランドピアノの澄んだ音色と、張りのある力強い歌声。繊細で力強く色鮮やかで、ぐっと観る側を引き込む力にあふれているなぁというのが今回初めてステージを観ての印象。
張りつめていて澄んでいて、空気の色をたちまち塗り変えていくようなヴォーカルのこの力はどこか今回の対バン相手である高橋徹也の世界観にも通じたものを感じるし、キーパーソンといえる上田禎さん・鹿島達也さんがこの二者の音楽に関わっているのも納得なのかも。
ドキュメント72時間のテーマソングでお馴染みになった「川べりの家」が序盤早々に披露された後は、ピアノからギターに持ち換えてのパフォーマンスだったのですがここからの俄然ロックモードにギアチェンジしての演奏がまたかっこいい。
爆音をがんがん鳴らしてヒートアップしていく演奏に全くひけをとらない一本芯の通った力強い歌声が切々と紡がれるその様は、音楽に乗せて魂が解放されている事を否応なしに伝えているようで、どこかスリリングに感じるほど。
一曲一曲終わる度に子供みたいに無邪気に「ありがとぉ」と伝えてくれる姿にはどこかほっとしたり。

天才肌シンガーソングライターはMCもやっぱりおもしろい。(うろ覚え故、行かれた方は各自で補完してください~)

松崎さん
「去年初めて高橋くんと会いまして、今日ライブ見せてもらうの初めてなので楽しみにしてました。今日はお客さんも高橋くんの番になったらみんな一斉にこう立ったりする感じなんでしょうか」
(~中盤にて~)
鹿島さん「いま一曲飛んだよね、わざと?」
松崎さん「曲順を手に書いてるんですけどね、汗かいたり手を洗ったりして消えちゃうんですね。笑
やろうと思ってた曲なんだけど、なので今やります」

鹿島さんはコーラスでも全面参加していたり、あの笑顔やアイコンタクトがメンバー間でしばしば見られたりして、ムードメーカー的な役割を果たしているのかなぁと思ったりしました。
最後はピアノに移動して、自分なりの反原発ソングという「大人は知ってる」で本編終了、再度幕が降りた後はセットチェンジの後、後攻高橋徹也バンドが登場。
ハリケーンビューティーから、まるで船がゆっくり航海に出るようにゆっくりと穏やかにスタート。
先ほど松崎さんが演奏したグランドピアノの前にはエレピがセットされ、佐藤さんは演奏によって両方を行き来するスタイル。
二曲目チャイナカフェではあのキレッキレのエレピ伴奏が冴え渡り、カッコいいことこの上ない。おーっ。
ここで正直な感想を一言・・・・・・ちょっとこの序盤二曲、ヴォーカルが若干バンドの音に押され気味? と思いながら聞いてしまいました。ごめんなさい。ただ、ここからが一気に開けていくわけですが。

本題に戻りまして。
高橋さん「今日は松崎さんとの共演で、初めて見てくださるお客さんもいらっしゃると思うのですが特に代表曲なんかもないので新曲を交えつつやっていこうと思います」
脇山さんのバスドラが位置がずれている、と鹿島さんからの指摘が入り、若干調整が入ったりしてから新曲、ハロウィンベイビー・新しい名前と初めて聞くタイトルが続きます。
なんというか、ライブだから当たり前なのかもしれませんが今のこの四人バンドの「いま」が伝わってくる世界観がありありと伝わるんだよなぁ、というのが聴いていて受け取った印象。
脇山さん・佐藤さんが新しい空気を入れて、今のより視界が開けて先へ先へと進もうとする高橋徹也のモードが手に取るように伝わるというか。より研ぎ澄まされてストレートに伝わる物になりつつあるのかな、なんて受け取りました。
夕食の後~夜明け前のブルースからはウッドベースに持ち替えた鹿島さんのベースが唸りを上げ、バンドメンバーもオーディエンスも熱気が高まる一方。
夜明け前~は大暴れするあのサックスがわたしの心の中で聞こえました。笑
ブラックバードの澄んだ美しいボーカリゼーション、大統領夫人~の最高潮ともいえる高まりはもう言わずもがな。
MCは相変わらずのユニークさ。

高橋さん「ここ数年・・・・・・3、4年くらいで台頭してきてる恵方巻きってあるじゃないですか。こう、筒状の、おにぎり?」
わたし「のりまき?」
(ごめんなさい、つっこまずに入られなかった。笑)
高橋さん「そういう行事には乗らないぞと思いつつ見かけると気にはなっていて、当日何日でしたっけ?」
(3日、とつっこみが入る)
高橋さん「当日は乗らないぞ、と思って翌日見に行ったら売ってなくて。あれはその日限定だったんですね。今度は一年後なのかと。ところであれって何の日なんですっけ。春分の日??」
(節分です、とつっこみ)
行事に疎い男、TT

高橋さん「最近テレビを見てると、捕まった犯罪者ってだいたいみんな上下スエットを着てるんですね。スエット、楽でいいんですけど・・・・・・気をつけたいなと」

社会問題じゃなくてそこなんですね。笑
そんな高橋さんの今日のファッション(たぶんモナ連ustでも着てた)茶色の模様の入ったセーター、細身のジーンズ、クラークスのデザートブーツ。
しかしまぁ、この絶妙なズレのユニークさがこの人の世界なんだ。

(共演の松崎さんについて)
高橋さん「松崎さんとは去年ご縁があってライブを拝見させていただき、一緒にやりたいと持ちかけさせていただきました。お話をしたところ「ツアー行く? 九州??」といきなり言われまして(笑)いやそんなつもりなくて、都内あたりでと・・・・・・(笑)

松崎さんアクティブでカッコいいぞ!笑(この翌日には沖縄ですもんね)
都内中心のライブ活動なのでこちらも行ける時は行けるようにしてるのですが(わたしは大阪)、フットワークの軽い方とのスプリットツアーには是非期待したい!

高橋さん「松崎さんバンドの皆さん、後で連絡先を教えてください」

とのことでしたので、今後の展開に期待です。

さて、本編は「今の音楽に向かう気持ちをシンプルかつストレートに表現した」という新曲The Orchestraで終了。
今後の新しい展開としてラブソングを、なんて話も出ていましたが、これが現在進行形で紡がれる高橋徹也流の音楽・バンド・それらを支えてくれる全てへの愛の現れなのかな、なんて個人的には思いました。溢れた思いが流れ着くその先をこれからも見つめていられたらいいな。
感無量の想いを噛みしめていた所で、アンコールに登場。メンバー紹介。

高橋さん「KID! 鹿島達也! 15年くらい呼んでるのに定着しない!」
ここで、後方で見ていたらしい松崎さん爆笑。うむ、和やかだ。笑
最後に披露された、犬と老人はこの美しい夜を締めくくるにはふさわしく。果てなく美しく、ファルセットのたおやかさにうっとりさせられました。


今後の展開について

高橋さん「次回は弾き語りのライブ、これは完売していますが当日お腹痛くなってこれなくなったりする人も居るので当日券をチェックしてください。
その次は3月22日に佐藤くんの弦アレンジの元、弦楽三重奏でのライブです。次は特別な編成でのライブになりますが、今年はそういった形態のライブは少なくして、バンドでの機会を増やしていこうと想っています」

お、これは期待が高まります。この4人で楽曲を育てていき、それが来るべき新作にも繋がっていくと思っていいのでしょうか。

終演後はフロアで物販などの対応をされていらしたので、お礼などをお伝えして帰らせて頂きました。
(たぶん酔ってたので妙に陽気な感じになってしまい、今振り返るとすごく恥ずかしい。笑)
次にこうしてこれるのがいつかは分かりませんが、まだこれからもずっと見届けたいなぁと強く思えた時間でした!
今後の展開にも期待です。

 

2/6(金) 晴れたら空に豆まいて 高橋徹也セットリスト

前奏:不在の海
1.ハリケーン・ビューティ

2.チャイナ・カフェ
3.ハロウィン・ベイビー
4.新しい名前
5.夕食の後
6.夜明け前のブルース
7.ブラックバード
8.大統領夫人と棺
9.The Orchestra
EC.犬と老人

 



"The Orchestra"(高橋徹也さんのブログ)

松崎ナオ Recording at 「晴れたら空に豆まいて」(2015/6/21収録のライブ動画)

高橋徹也・松崎ナオ ツーマンライブ『大統領夫人は知っている』感想(chinacafeさんによるtogetterまとめ)

 

2014/11/08 HARCO Solo Tour「Between the Bookends」-京都Sole Cafe

個人的にはHARCOのライブは春フェス以来、ワンマンはキコエルツアー以来でした。
暫くぶりの、そして個人的には初めての弾き語り単独でのHARCOのライブ、始まってしまえばあの穏やかで軽やかで優しいHARCOワールドなのでした。

さて、長らくアルバムも出ていないけれどどんなセットリストが来るの? 
とどきどきしていたのですが、始まってしまえば、現時点での最新作である南三陸ミシン工房のうた〜未発表の新曲を含めてのバランスの整ったベストな選曲! 
Eテレ0655でかかっていた「今日の選択」ではどっちにしーよう♪の後、迷っているのかゆっくりと間を置くのがツボでした。笑
個人的には大好きなwinter,sports,rainbowの前奏が始まった時、わーっと高まりましたね。うふふ。
カップリングのshort filmが演奏されたのはちょっとびっくり)
Winter〜後にはPVのアニメーションの動きよろしく、スキーのストックを振るアクションを見せてくれたりもしました。相変わらずおちゃさん。笑

今回は5月に鎌倉で開催された企画ライブ・貸切図書館の出張verということで、曲の合間には沢山の本の紹介も。
HARCOによる紹介した本のリスト→こちら
見れば分かる通り、海外・国内の純文学から私小説、随筆集など、書店に平積みされるベストセラーとは一味もふた味も違う一捻りがされたセレクトばかり。
ものがたりをそっと紐解くようなあのなんとも言えない語り口や柔らかな響きがすとんと胸に響く言葉たちはこんなところにルーツがあるんですね。
詩を書く人間として、言葉の響きや表現の心地よさに惹かれるとの事でした。
本の言葉を朗読してから歌へと入るところは、本の世界から地続きのHARCOワールドの扉がそっと開かれるよう。
なんとも言えないあの軽妙で心地よい話しぶり、聞いてて楽しいですね。iRadio、復活して欲しいなぁ。

一人とは言え、芸達者ぶりの光るカラフルなパフォーマンスは勿論健在。
串田孫一さんの「文房具56話」からの文房具の音では勿論おなじみの文房グルーブも健在!(セロテープ、クリップの箱、ホチキスなどの音を鳴らして、その場で重ねてループさせたもののリズムに乗って曲を奏でるパフォーマンス。昔はエアダスターも使ってたよねー)
Ipodから音を出しての演奏もありましたが、曲の始まるタイミングよりも早く演奏が流れてきてしまったトラブルもあり、そんな時には機材に向かって「こら、しーっ」と宥める一場面も。あはは、おちゃめさんなんだからもう。笑(二回目)
そんなトラブルがありつつのNight hikeは春フェスではドラムボーカルで披露されましたが、今回はキーボードで。
弾むみたいなタッチでの軽やかに鳴らされるカラフルなあの音色、生で聴くとますます気持ちいいですね。

tobiuo pianoでの「敬虔なるアリョーシャ」前のMCにて、この曲におけるアリョーシャ=カラマーゾフの兄弟にでてくるアリョーシャの事だと説明した上で「アリョーシャは良い子で〜」みたいな事を言ってたと思うのですが(うろ覚えでごめんなさい)、本の主人公に結構思い入れを持って応援しちゃうタイプなのかしら? アップダイクの「走れウサギ」を紹介した時には「ウサギは愛を求めていたんですね」という振りから演奏された「愛されたいから」では、歌詞を書いた紙を壁に貼り、みんなで歌って! 手拍子も! とご指導が。笑
春フェス大阪での泰行先生ラップの記憶も新しい(笑)わけですが、今回はお客さんみんなで歌ったことでまた新たな曲の世界が広がった気がします。
「今回は一人で車で回っていて機材をいろいろ運んでいます」との言葉と共に、珍しい? アコギ伴奏での盛り上がりっぷりは和やかで楽しさいっぱい。
HARCOの歌の世界って、ほんとにまっすぐに胸に届いてやわらかで心地よいですよね。
久しぶりにじっくりワンマンを見て思ったのは、極上の流れるようなメロディ、胸に響く優しい歌声、そして何より、やわらかなあのトーンとリズムが身を委ねたくなる心地良さにあふれてるんだなぁという事でした。
とにかくずっと心地よくて、音の世界にゆらゆら浸りたくなって目を閉じて聴き入ってました。

佐藤泰司さんの「海炭市叙景」(余談ですが、これってキリンジ進水式のモチーフになった映画の原作だね!)に関して
「函館の街をモデルにした作品ですが、僕も自分の住む神奈川県川崎市をテーマに曲を作りました」と、その名も「丘陵叙景」
シンガーソングライターとは私小説を書く作家ともどこか似ていて、妄想から膨らませた曲もあれば実生活から導き出されて生まれた曲もある、との言葉から続いたのは、HARCO流の日常を切り取った曲たち。
住み慣れた場所を離れるなんとも言えない寂しさを歌う名曲「お引越し」
別れた恋人の電話番号を語呂合わせで覚えていてついかけたくなってしまうモヤモヤした未練漂う情けない男ごころを歌う新曲「電話をかけたら」
閉店間際の本屋さんに駆け込んで何かが欲しくて棚を見渡すも、何も買わずに出てきてしまう、なんてありふれた日常を切り取った「閉店時間
どれを取ってもささやかな『日常の中のひとひら』を描いた曲ばかりで、でも、そんな一見すると見過ごしてしまいそうな日々のうつろいゆく想いへの寄り添い方はとにかく優しくて、穏やかで、それでいてちょっぴり切なくて。
だからこんなに瑞々しく胸に響くのかな、と気づけばぎゅうっと穏やかな想いに満たされていくのを感じられました。

HARCOブックセンターはこれにて閉店時間です」との言葉と共に本編を終えた後はすぐにアンコール。
ここで、「先日子どもが産まれました」とパパになったご報告が改めてご本人の口から伝えられました。
「quinkaとの結婚から10年、忘れた頃に授かったプレゼントのよう」と、嬉しさを隠せない様子がひしひしと。
Soleは5回目くらいですが、昼公演は初めて。そのうち息子もここでライブやるようになるのかな、なんて20年後の話をしても仕方ないんですが」
なんて、未来予想図まで飛び出す始末。
「楽器は沢山あるのでさせてみたいけれど、もし音楽に向いていなければ何か他の道を目指してほしい」とのこと。
また、HARCOバンドはギターの石本さんも今年パパに、マリンバその他のシーナさんはママになり育児休暇中で「いっきに同学年がふえました」ととっても嬉しそう。
新しく授かった命、家族への思いを包み込むようなとびっきりの優しさを込めた「世界で一番頑張ってる君へ」で本編終了。
ただいま制作中のアルバムを携えて、次回は来年春〜夏頃にバンドで関西に着ます、との事だそうです。うん、楽しみだねー。

本編終了後はサイン会もあり(ご本人の前に置かれた椅子に「ろくろみたいですね」とエアろくろを回す場面も!)(ほんともう、いちいちおちゃめなんだから。笑)、折角なので買いそびれていたアルバムを手にサインをお願いに。
HARCOさん「僕の正面にいらした方ですね、よく見えてました」(ニコニコ)
はっ、二列目だったのに!はずかしい!笑
新米パパのHARCOさんにお祝いの言葉と共に、ぜひ親子でステージに立ってくださいね、それまでずうっと応援してますとお伝えして帰りました。

次のライブや来春予定の新作は勿論ですが、HARCOファミリーバンド(?)はどうなっていくんだろう、これからがますます楽しみになりました(^^)