午前三時の音楽

ライブの感想などを書いています

2014/11/08 HARCO Solo Tour「Between the Bookends」-京都Sole Cafe

個人的にはHARCOのライブは春フェス以来、ワンマンはキコエルツアー以来でした。
暫くぶりの、そして個人的には初めての弾き語り単独でのHARCOのライブ、始まってしまえばあの穏やかで軽やかで優しいHARCOワールドなのでした。

さて、長らくアルバムも出ていないけれどどんなセットリストが来るの? 
とどきどきしていたのですが、始まってしまえば、現時点での最新作である南三陸ミシン工房のうた〜未発表の新曲を含めてのバランスの整ったベストな選曲! 
Eテレ0655でかかっていた「今日の選択」ではどっちにしーよう♪の後、迷っているのかゆっくりと間を置くのがツボでした。笑
個人的には大好きなwinter,sports,rainbowの前奏が始まった時、わーっと高まりましたね。うふふ。
カップリングのshort filmが演奏されたのはちょっとびっくり)
Winter〜後にはPVのアニメーションの動きよろしく、スキーのストックを振るアクションを見せてくれたりもしました。相変わらずおちゃさん。笑

今回は5月に鎌倉で開催された企画ライブ・貸切図書館の出張verということで、曲の合間には沢山の本の紹介も。
HARCOによる紹介した本のリスト→こちら
見れば分かる通り、海外・国内の純文学から私小説、随筆集など、書店に平積みされるベストセラーとは一味もふた味も違う一捻りがされたセレクトばかり。
ものがたりをそっと紐解くようなあのなんとも言えない語り口や柔らかな響きがすとんと胸に響く言葉たちはこんなところにルーツがあるんですね。
詩を書く人間として、言葉の響きや表現の心地よさに惹かれるとの事でした。
本の言葉を朗読してから歌へと入るところは、本の世界から地続きのHARCOワールドの扉がそっと開かれるよう。
なんとも言えないあの軽妙で心地よい話しぶり、聞いてて楽しいですね。iRadio、復活して欲しいなぁ。

一人とは言え、芸達者ぶりの光るカラフルなパフォーマンスは勿論健在。
串田孫一さんの「文房具56話」からの文房具の音では勿論おなじみの文房グルーブも健在!(セロテープ、クリップの箱、ホチキスなどの音を鳴らして、その場で重ねてループさせたもののリズムに乗って曲を奏でるパフォーマンス。昔はエアダスターも使ってたよねー)
Ipodから音を出しての演奏もありましたが、曲の始まるタイミングよりも早く演奏が流れてきてしまったトラブルもあり、そんな時には機材に向かって「こら、しーっ」と宥める一場面も。あはは、おちゃめさんなんだからもう。笑(二回目)
そんなトラブルがありつつのNight hikeは春フェスではドラムボーカルで披露されましたが、今回はキーボードで。
弾むみたいなタッチでの軽やかに鳴らされるカラフルなあの音色、生で聴くとますます気持ちいいですね。

tobiuo pianoでの「敬虔なるアリョーシャ」前のMCにて、この曲におけるアリョーシャ=カラマーゾフの兄弟にでてくるアリョーシャの事だと説明した上で「アリョーシャは良い子で〜」みたいな事を言ってたと思うのですが(うろ覚えでごめんなさい)、本の主人公に結構思い入れを持って応援しちゃうタイプなのかしら? アップダイクの「走れウサギ」を紹介した時には「ウサギは愛を求めていたんですね」という振りから演奏された「愛されたいから」では、歌詞を書いた紙を壁に貼り、みんなで歌って! 手拍子も! とご指導が。笑
春フェス大阪での泰行先生ラップの記憶も新しい(笑)わけですが、今回はお客さんみんなで歌ったことでまた新たな曲の世界が広がった気がします。
「今回は一人で車で回っていて機材をいろいろ運んでいます」との言葉と共に、珍しい? アコギ伴奏での盛り上がりっぷりは和やかで楽しさいっぱい。
HARCOの歌の世界って、ほんとにまっすぐに胸に届いてやわらかで心地よいですよね。
久しぶりにじっくりワンマンを見て思ったのは、極上の流れるようなメロディ、胸に響く優しい歌声、そして何より、やわらかなあのトーンとリズムが身を委ねたくなる心地良さにあふれてるんだなぁという事でした。
とにかくずっと心地よくて、音の世界にゆらゆら浸りたくなって目を閉じて聴き入ってました。

佐藤泰司さんの「海炭市叙景」(余談ですが、これってキリンジ進水式のモチーフになった映画の原作だね!)に関して
「函館の街をモデルにした作品ですが、僕も自分の住む神奈川県川崎市をテーマに曲を作りました」と、その名も「丘陵叙景」
シンガーソングライターとは私小説を書く作家ともどこか似ていて、妄想から膨らませた曲もあれば実生活から導き出されて生まれた曲もある、との言葉から続いたのは、HARCO流の日常を切り取った曲たち。
住み慣れた場所を離れるなんとも言えない寂しさを歌う名曲「お引越し」
別れた恋人の電話番号を語呂合わせで覚えていてついかけたくなってしまうモヤモヤした未練漂う情けない男ごころを歌う新曲「電話をかけたら」
閉店間際の本屋さんに駆け込んで何かが欲しくて棚を見渡すも、何も買わずに出てきてしまう、なんてありふれた日常を切り取った「閉店時間
どれを取ってもささやかな『日常の中のひとひら』を描いた曲ばかりで、でも、そんな一見すると見過ごしてしまいそうな日々のうつろいゆく想いへの寄り添い方はとにかく優しくて、穏やかで、それでいてちょっぴり切なくて。
だからこんなに瑞々しく胸に響くのかな、と気づけばぎゅうっと穏やかな想いに満たされていくのを感じられました。

HARCOブックセンターはこれにて閉店時間です」との言葉と共に本編を終えた後はすぐにアンコール。
ここで、「先日子どもが産まれました」とパパになったご報告が改めてご本人の口から伝えられました。
「quinkaとの結婚から10年、忘れた頃に授かったプレゼントのよう」と、嬉しさを隠せない様子がひしひしと。
Soleは5回目くらいですが、昼公演は初めて。そのうち息子もここでライブやるようになるのかな、なんて20年後の話をしても仕方ないんですが」
なんて、未来予想図まで飛び出す始末。
「楽器は沢山あるのでさせてみたいけれど、もし音楽に向いていなければ何か他の道を目指してほしい」とのこと。
また、HARCOバンドはギターの石本さんも今年パパに、マリンバその他のシーナさんはママになり育児休暇中で「いっきに同学年がふえました」ととっても嬉しそう。
新しく授かった命、家族への思いを包み込むようなとびっきりの優しさを込めた「世界で一番頑張ってる君へ」で本編終了。
ただいま制作中のアルバムを携えて、次回は来年春〜夏頃にバンドで関西に着ます、との事だそうです。うん、楽しみだねー。

本編終了後はサイン会もあり(ご本人の前に置かれた椅子に「ろくろみたいですね」とエアろくろを回す場面も!)(ほんともう、いちいちおちゃめなんだから。笑)、折角なので買いそびれていたアルバムを手にサインをお願いに。
HARCOさん「僕の正面にいらした方ですね、よく見えてました」(ニコニコ)
はっ、二列目だったのに!はずかしい!笑
新米パパのHARCOさんにお祝いの言葉と共に、ぜひ親子でステージに立ってくださいね、それまでずうっと応援してますとお伝えして帰りました。

次のライブや来春予定の新作は勿論ですが、HARCOファミリーバンド(?)はどうなっていくんだろう、これからがますます楽しみになりました(^^)