午前三時の音楽

ライブの感想などを書いています

高橋徹也 レコ発ツアー・ファイナル『REST OF THE WORLD 1999-2014』

15年前、未発売のままだった幻の4thアルバム、「Rest of the world」レコ発ツアーファイナルと銘打っての4人バンド編成でのライブ。【from 1999 to 2014】のサブタイトル通り、音楽家高橋徹也の歩んできた道のりの集大成を見せつけるような、まるで終わりの無い永遠に続くロードムーヴィーが目の前で繰り広げられているようなそんな象徴的なライブでした。

超満員のClub Que、個人的には初めての・念願のバンドでの高橋徹也が見れるのが嬉しくて嬉しくて、そわそわしながら開演を待ち構えていたところ、定刻19時過ぎにメンバー登場。
おお、バンド編成だからか今日は黒いシャツにスラックスだ! カッコいいー。
8月の静岡では「最後にデビュー曲を」と披露されたMy Favourite Girlから本編スタート! 原曲の溌剌とした爽やかさから時を経て、どこか大人っぽいジャズテイストなムードを漂わせるように。のっけから手拍子を請うアクションで満員の観客を煽る煽る。
これは熱い夜になるな、と確信した所、畳み掛けるような勢いで真夜中のメリーゴーランド(音源全て持っていないのでこれは?と思ったらライブのみで披露されている未発表曲のようですね)~チャイナカフェ~怒りを込めて、とグル―ヴに一気に包み込まれるような選曲がどんどん続く。
これはレコ発と銘打ちながら、18年間の高橋徹也の音楽家人生をステージの上で追いかけていくようなライブになるんだな、というのを「怒りをこめて」が披露された時に実感。
人の噂~夕食の後~Nigth&Dayの流れの、どこか低温な手触りでありながらゾクゾクと胸の内に熱を広げ、蝕んでいく音の世界はこれこそ高橋徹也の真骨頂だなぁと。
声楽やってらっしゃいました? と聞きたくなっちゃうような、ピアノがそのまま歌っているかのような美しく伸びやかな響きの高音が魅力の方ではありますが、「人の噂」での地を這うようなトーンを抑えた歌声もまた魅力的。凄いヴォーカリストだ!
高橋徹也の音楽には欠かせないピースの一つである、鹿島達也氏のベースラインとの融合がまた、たまらない。
どこか不穏な空気を感じさせた流れから一辺、「曇ったガラス」の透明感と柔らかさ、「赤いカーテン」の疾走するリズムと果てしなく高まっていく音の連なり! これが生で見れる(聴ける)なんて!! この辺で会場全体のヒートアップは最高潮に達したような。

高橋ライブではお馴染み?なんだかちょっとおかしいMCは勿論健在。(流れや言葉のニュアンスなど、うろ覚えですので各自補完お願いします)

「……話す事が特にないんですが」
(大体いつもこれ言ってる)
(京都では実際に長い沈黙が起こった。笑)
「うちのお父さんは俺よりも背が高くて凄くカッコよくて大好きなんですが。20くらいの時にはバンドをやっている自分に苦言を漏らしていた父も今は応援してくれるようになりました。
こないだ初めて、一緒にラーメンを食べに行ったんですが、スープが熱かったらしく『あつっ、あつっ』って言ってるのを見て、なんだか泣きそうになりました」

お父さんもだけど、そんな事言えちゃう高橋さんが可愛い。笑 あと、『お父さん』って呼び方も。
(余談ですが、よく見た映画の感想をメールしてくれるというお父上か! ってお話聞きながら思いました。)
素直に『お父さんがカッコいい』って言えちゃう男性って素敵ですね。

「話す事が無い」余り、アンコールでは「脇山くんなんか喋って」、と無茶ブリをしてステージ袖に引っ込む始末。
……そして脇山さんも話すことは無かったようでした。笑
いやその、ライブの告知とかすればいいじゃないですか!笑

(メンバー紹介時)
 「ドラムス、脇山コウイチ!  違う、広介だ」
コウイチって誰だ!笑
「ベース、鹿島Kid達也!」
「Kidってステージネームカッコいいですよね、俺も何か無いかなぁ」
鹿島さん「Kidって呼ぶの今じゃ高橋だけだよw」
男性のお客さん「キッド―!」

鹿島さん人気あるよね、わたしも大好きです。笑

―さて、本編に戻りまして。
ホテルスターダスト~ブラックバード~ハリケーン・ビューティーと、ここからは一気に近年の流れを汲んだかのようなセットリスト。
「ある種の熱」って、狂おしい程の美しさと秘めた狂気と閉塞感・まさにベッドタウンから地続きの良質な映画を見ているような静けさに包まれた作品で大好きなのですが、そこに続いた「大統領夫人と棺」にはそこから今一度立ち上がって【怒りを込めて振り返れ】的な熱さと、解き放たれた扉から一気に羽ばたいていくような開放感を感じていました。ライブでもこの勢いは加速を増すばかり。
個人的にはSugar Beans佐藤さんの隠し切れないテンションの熱さに目を奪われました。
コーラスでも全面的に参加されるようになり、ハーモニーの溶け合う様がまた素晴らしい。高橋バンドに欠かせない存在感とオーラをビシビシと感じました。

<余談>
静岡でのデュオを見た際、初めて見た同じ編成(2013年京都)で感じた距離感がぐっと縮まったかのような、お二人の高め合い・登りつめていく空気に非常に感動したので佐藤さんを捕まえて(笑)感想をお伝えした際、ここ最近になってぐっと距離が縮まったとおっしゃってました。
音楽という共通言語を通してより深いコミュニケーションが成り立つようになったからこそ、あのパフォーマンスに到達したんでしょうね。(しみじみ)
<終わり>


さて、大統領夫人~の流れを受けて、最高潮にヒートアップした所での真っ赤な車! 最高! 高橋徹也という人の音楽はどう説明したらいいのか形容がとても難しいのですが(彼がワン&オンリーである証ですね)みなぎるこの狂おしい程の熱さと疾走感! やはり根底にあるのはロックなんですね。
続いて、今回一番期待していたユニバース! あの果てしない開放感と高まりを生で聞けるなんて! 歌の世界そのまま、音楽という途方もない力に後押しされて魂が解き放たれていくような途方もない心地よさ。閉じ込められていたものが、堰を切って溢れ出していくかのよう。
まるで心の扉を開け放って魂の全てを音に乗せて届けてくれるようで、その姿にこちらも感動して全てをステージに向かって投げるしかないわけです。
オーディエンスが途方もなく熱かったという感想が多数見受けられたり、ステージから「皆さん最高です!」と言ってくれたのもきっとそんな、音楽による幸福なコミュニケーションがあの場で成立していたからなんだな、と思いました。
ヒートアップした歓喜もそのまま、滑り込むように流麗な夜明けのフリーウェイで本編終了。

アンコール前、スタッフさんが準備を始めたのでいよいよ? とそわそわ待ち構えていたところ、一曲目は予告されていたホーンセクションを迎えての「新しい世界」!
レコーディングアレンジでライブで披露されたのはなんと初めて!
どこまでも伸びやかに高らかに鳴り響く歌声にホーンセクションが彩りを添え、目の前の全てを塗り替え、光の差し込む新しい世界の幕開けを祝福するかのよう。
毎回ライブを見るたび、高橋徹也という音楽家がどこにも無い地平を開拓し、そこでしか見えない「枠線の無い風景」を見せてくれるのでその度に強い感銘を受けて居るのですが、この日のライブは本当に、探し求め続けた道のりの集大成であり、一つの到達点だったのかもしれないと強く思いました。
それでも勿論ここが頂上なのではなく、永遠に続く道のりのその途中なんですよね。
「犬と老人」で静かに幕を下ろすようにステージを去ったその後、鳴り止まぬ拍手に答えての急遽のWアンコールは「バタフライナイト」
たおやかで美しく、熱の気配を潜めて。熱く燃え上がった会場の余韻をより深めるようなパフォーマンスは、この途方もない熱い熱い夜を締めくくるのに相応しいものだな、と強く感じました。

何カ月も前からこの日に向けて、熱い熱い意気込みや並々ならぬ気合いを込めている事をはしばしから感じ取ってはいたのですが、ああいった形のライブになった事の原因の一つに、会場にもいらしていたというゴメス山田さんの7年ぶりのバンドでのワンマンライブ・the pillowsの結成25周年ライブの影響が色濃くあったのかな、と勝手ながら思ったり。
隠し切れない胸の高鳴りと熱さ、そして何より、音楽を通じて心を解き放つ喜びに満ち溢れたかのような、ステージで見せてくれた最高の笑顔がとても印象的でした。
「2年後のデビュー20周年に何かを」という言葉と共に、ますますこれからの高橋徹也の歩む道のりをこれからも応援し続けたいと強く思いました。

 

11/2 CLUB Queセットリスト

My Favourite Girl
真夜中のメリーゴーランド
チャイナカフェ
怒りを込めて
人の噂
夕食の後
Night & Day, Day & Night
曇ったガラス
赤いカーテン
ホテル・スターダスト
ブラックバード
ハリケーン・ビューティ
大統領夫人と棺
真っ赤な車
ユニバース
夜明けのフリーウェイ

【アンコール】
新しい世界
犬と老人

【アンコール(二度目)】
バタフライナイト

 

 


昨年リリースされた7年ぶりの新作「大統領夫人と棺」、PVを加えてのリニューアルバージョンがこの日のライブから販売開始されました。
アーティスト本人に一銭も入らないとんでもないプレミア価格で販売されるよりもずっといい! しかもお値段が初版から200円しか上がっていません!(細かい)

Tetsuya Takahashi - First Lady and Coffin (MV digest)


カッコいい、としか言えないですね。

高橋徹也 レコ発ツアー・ファイナル『REST OF THE WORLD 1999-2014』感想

沢山の人たちの受け止めた熱い熱い思いがここに。読み返すと色々蘇ります。

REST OF THE WORLD 発売記念インタビュー - ポプシクリップ

リリースの経緯から、過去の状況~現在の想いまで。充実のインタビュー!

下北沢ハリケーン・ビューティ(五十嵐祐輔さんのブログ)

[カリスマロックスター]の佇まい。そうそう! 身近な方の視点から語られる言葉はまた違う新鮮さを感じたりも。

高橋徹也 ツアーファイナル“REST OF THE WORLD1999-2014”(山田稔明さんのブログ)

同業者ならではの熱い思いと信頼のおける言葉に凄く胸が熱くなります。

高橋ワンマン(鹿島達也さんのブログ)

シンプルかつストレートな言葉の重みにただ嬉しくなったり、なんだか泣きたくなったり。

高橋徹也のふしぎ(Sugar Beans佐藤さんのブログ)

お二人の中で培ってきた物、感じた手ごたえが伝わってきてただ嬉しくなります。

鳴り響く音、重なり合う熱(高橋徹也さんご本人のブログ)

言わずもがな、ですね。